化学辞典 第2版 「陽子親和力」の解説
陽子親和力
ヨウシシンワリョク
proton affinity
プロトン親和力ともいう.気相における中性分子(M)と陽子(H+)の結合反応
M + H+ → MH+
で放出される発熱量.生成したプロトン化イオン(MH+)の安定性を示す目安となる.H2 のような簡単な分子については理論的計算もなされているが(~290 kJ mol-1),一般の分子では直接測定することは困難で,次の二つの方法で概略値が求められている.【Ⅰ】質量分析計を用いて適当な分子を電子衝撃によりイオン化し,このとき断片化により生じたプロトン化イオンの出現電圧と,このイオン化に関与する分子種(分子,イオン,遊離基など)の熱化学的数値(結合・解離エネルギー,イオン化エネルギーなど)から間接的に求める.【Ⅱ】次式,
M1H+ + M2 → M1 + M2H+
のイオン-分子反応が観測されたとき,このイオン-分子反応は発熱反応であると仮定して,M1 と M2 の陽子親和力の大小を決める方法.たとえば(単位:kJ mol-1),CH3NH2(880),NH3(870),CH3-COCH3(790),CH3OH(760),H2O(700)は大きな陽子親和力をもち,そのほか多くの無機,有機の化合物も正の陽子親和力をもつ.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報