隠裏(読み)かくしうら

精選版 日本国語大辞典 「隠裏」の意味・読み・例文・類語

かくし‐うら【隠裏】

〘名〙 衣服の胴裏、袖裏など、外から見えない部分に他の部分とは違った布をつけること。また、その布。
※浮世草子・好色一代女(1686)四「肌にりんずの白無垢、中に紫がのこの両面、うへに菖蒲(あやめ)八丈に紅のかくし裏を付て」
[語誌]江戸時代、元祿一六八八‐一七〇四)以前に上方で流行した紅絹製の裏地の形態をさした言葉がもとになって生まれた語。「俳諧・類船集‐也」の「もみ紅梅のうらは、すそを山がたにそめて、あかみをかくすぞかし」や「浮世草子・好色一代男」の「裾も山道に取ぞかし」(六・七)「肌着に隠し緋むく」(七・二)などの例は、紅裏の裾を他の布で継いだり、模様(多くは山道模様)で染めたりして、着物の表に紅裏が見えないように隠す、当時の衣服の風俗を示している。上方では元祿四、五年頃に既に陳腐なものと見なされたが、流行は東へ移り江戸で一八世紀中頃(元文末~寛延頃)まで続いた。

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