日本大百科全書(ニッポニカ) 「集合心理学」の意味・わかりやすい解説
集合心理学
しゅうごうしんりがく
psychologie collective フランス語
このことばの用法はかならずしも一定しないが、一つの用法として、人間の心理活動の社会生活による規定性を中心的に明らかにする分野を、とくに生物学的心理学や個人心理学から区別してこのようによぶことがある。この意味での集合心理学の提唱者にフランスの精神病理学者C・ブロンデルがいる。ブロンデルによれば、人間の正常な意識は、社会的なものである言語によって表現を与えられ、客観化されているのであり、この言語の媒介によって成立する同質意識は、個人心理学の対象ではない。これを扱うものとして、集合心理学が重要性をもってくるとした。こうした考え方には、集合意識と個人意識の範疇(はんちゅう)的な区別をつねに重視するデュルケーム学派の影響も働いている。なお、集合心理学という語の別の用法としては、諸個人の一時的な集合から生まれる群集の心理を扱う分野(群集心理学)をこのようによんでいる例もある。
[宮島 喬]
『C・ブロンデル著、清水幾太郎・武者小路公秀訳『社会心理学入門』(1958・日本評論新社)』