(1)1896年(明治29)6月3日、清国の李鴻章(りこうしょう)がロシアのロバノフ外相と結んだ防敵相互援助条約。李‐ロバノフ条約ともいう。露清両国および韓国の領土が日本に攻撃されたとき両国軍の相互支援と単独不講和を約し、清国はロシアに東清(とうしん)鉄道の敷設権とそれによる軍隊輸送権を与えた。日本は日露開戦後までこの密約の存在を知らず、日露協商策を進めたが、この密約の存在により失敗して日英同盟を選んだ。
(2)1900年(明治33)11月11日、義和団(ぎわだん)事件に出兵したロシア軍指揮官アレクセーエフと奉天(ほうてん)将軍増祺(ぞうき)が取り決めた旅順口暫定条約。この条約でロシアは奉天省内の鉄道保護および治安維持のための駐兵権を獲得し満州の軍事行政権を掌握しようとした。そのため日本は清国の領土保全を唱えて英独と協力し、露清両国に圧力をかけ密約を打破した。この交渉は日露開戦外交の伏線となった。
[藤村道生]
『ベ・ア・ロマーノフ著、山下義雄訳『満州に於ける露国の利権外交史』(1934・栗田書店/復刻版・1973・原書房・明治百年史叢書)』▽『外務省編『小村外交史』(『日本外交文書 別冊』1953・新聞月報社/復刻版・1965・原書房・明治百年史叢書)』
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