露滴庵(読み)ろてきあん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「露滴庵」の意味・わかりやすい解説

露滴庵
ろてきあん

広島県尾道(おのみち)の浄土寺にある茶室。もと向島(むかいしま)の富豪で当寺の檀家(だんか)であった富島家(天満屋)にあったものを、1814年(文化11)5代三右衛門のとき移建したと伝えている。最初伏見城内にあって秀吉が愛用していた茶室で、のち本願寺に移され、さらに富島家に移されたとも伝えられているが、富島家以前の来歴は明らかでない。三畳の客座を挟んで台目(だいめ)の点前座(てまえざ)と一畳の相伴席を配した、いわゆる燕庵(えんなん)形式の間取りである。燕庵における織部(おりべ)好みの特色がよく踏襲されているが、屋根の構成、点前座の上を落天井(おちてんじょう)とし、床前(とこまえ)だけ落掛(おとしがけ)上の回り縁下に竹を添えている点など、本歌と異なる手法もあり、細部の意匠手法に洗練を欠く点が惜しまれる。

中村昌生

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

苦肉の策

敵を欺くために、自分の身や味方を苦しめてまで行うはかりごと。また、苦しまぎれに考え出した手立て。苦肉の謀はかりごと。「苦肉の策を講じる」...

苦肉の策の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android