頓医抄(読み)とんいしょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「頓医抄」の意味・わかりやすい解説

頓医抄
とんいしょう

鎌倉時代を代表する医学全書。1303年(嘉元1)梶原性全(かじわらしょうぜん)が撰述(せんじゅつ)した。和文をもって書かれており、全50巻。病気の分類は隋(ずい)の『諸病源候論』により、処方は『千金方』『太平聖恵方』など唐・宋(そう)の医書から摘録しているほか、自己の経験を付している。巻43、44には彩色の内臓図が収められているが、これは当時の西洋解剖学に比してはるかに高度なものである。性全はその後『聖済総録』を得て、『万安方(まんあんほう)』62巻を撰した。

[小曽戸洋]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の頓医抄の言及

【医学】より

…彼の著書《喫茶養生記》は,中国やインド医学の説を引用しつつも,著者独自の見解を提出した,最初の日本医学書といわれる。梶原性全は,和文で書かれた最初の医書《頓医抄》50巻(1303)と,《万安方》62巻(1315)の著者として知られている。後者は,隋・唐・宋の医書を参照しながら自分の経験も加えたもので,興味のあるのは内臓諸器官の解剖や生理についてかなり詳しいことである。…

【梶原性全】より

…浄観と号した。鎌倉で著述した《頓医抄》《万安方》の2書が知られる。実地医療にたずさわったが,叡尊や忍性らのように社会事業や救療活動に直接関与したか否かは不明。…

※「頓医抄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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