六訂版 家庭医学大全科 「顎変形症の歯科矯正治療」の解説
顎変形症の歯科矯正治療
(歯と歯肉の病気)
歯は、あごの骨のなかの範囲でしか動かすことができません。そのため、極端に上の前歯が出ていたり、受け口、顔のゆがみがみられるような上あごと下あごの骨格的なバランスに大きな不調和がみられるような症例(顎変形症)では、通常の歯科矯正治療だけでは理想的な噛み合わせを得ることができず、外科的にあごの骨の切除を行い、理想的な噛み合わせにする場合があります。
この治療法では、噛み合わせだけではなく、顔貌の改善も期待することができます(図23)。上あご、下あご単独の手術になるか、両方の手術になるかは、骨格的なバランスや顔貌を考慮して決定することになります。
一般的に、外科手術は成長終了後に行われます。外科手術によるあごの移動を行う前に、術前矯正治療と呼ばれる上下の歯並びを整えておき、手術時にあごの骨をよい位置に固定できるような矯正治療が必要になります。外科手術は全身麻酔によって行い、一般的には3~4週間程度の入院が必要になります。
さらに、手術後は術後矯正治療と呼ばれる過程をへて、しっかりと安定した噛み合わせを獲得します。矯正装置を外したあとは、保定装置を口のなかに装着して予後の観察を行います。
外科手術を伴う歯科矯正治療における治療費は、保険の適用が可能です。
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報