朝日日本歴史人物事典 「願西尼」の解説
願西尼
平安中期の尼。父卜部正親と母清原氏の子。源信の姉。戒律を護り,『法華経』を数万部も読誦し,数えきれないほどの念仏をし,自己の罪根を強く恐れていた。食はわずかに命を支え衣はわが身を隠すに必要なものに限り,あとは貧者に与えたという。このため多くの人が帰依し,普賢菩薩や観音菩薩も彼女を擁護し摩頂(頭をなでる。転じてかわいがるの意)するという不思議を現した。寛弘年中(1004~12)に没したが,臨終の刹那に,眼に光明を見,耳に妙法を聞き,合掌して仏を礼拝しながら息絶えた。なお『今昔物語』(巻12~30)の願西話の後半には妹の願証の話が混入している。<参考文献>『本朝法華験記』
(小原仁)
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