布施(読み)フセ

デジタル大辞泉 「布施」の意味・読み・例文・類語

ふ‐せ【布施】

《〈梵〉dānaの訳。檀那と音写》仏語。
六波羅蜜の一。施しをすること。金品を施す財施ざいせ、仏法を説く法施ほうせ、恐怖を取り除く無畏施むいせの三施がある。布施波羅蜜。
僧に読経などの謝礼として渡す、金銭や品物。「布施を包む」

ふせ【布施】[地名]

大阪府東大阪市西部の地域。もと布施市。大阪市に隣接し、金属機械工業が盛ん。

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精選版 日本国語大辞典 「布施」の意味・読み・例文・類語

ふ‐せ【布施】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( [梵語] dāna の訳語。施とも訳す。また、檀那と音訳し、檀とも略す ) 六波羅蜜の一つ。施しをすること。
    1. (イ) 仏や僧・貧者などに、衣服・食物などの品物や金銭などを施し与えること。また、その財物。財施。
      1. [初出の実例]「遠きすめろきの御地を布施の奉らくは御世御世にも不朽滅可有物となも」(出典:法隆寺伽藍縁起并流記資財帳‐天平一九年(747))
    2. (ロ) 教法を説くこと。僧が説法によって財施に報いること。法施。
    3. (ハ) 仏菩薩が一切の衆生から種々の恐怖を取り去って救うこと。無畏施
  2. [ 2 ] 大阪府東大阪市西部の地域名、旧市名。江戸時代からの河内木綿の産地。昭和一二年(一九三七)市制。同四二年河内・枚岡の両市と合併して東大阪市となる。

ふせ【布施】

  1. 姓氏の一つ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「布施」の意味・わかりやすい解説

布施(島根県)
ふせ

島根県北部、隠岐郡(おきぐん)にあった旧村名(布施村(むら))。現在は隠岐島町の北東部を占める地区。2004年(平成16)西郷町(さいごうちょう)、五箇(ごか)、都万(つま)の2村と合併、隠岐の島町となる。旧布施村は隠岐諸島島後(どうご)北東部に位置し、国道485号が通じる。享保(きょうほう)年間(1716~1736)藤野孫一(ふじのまごいち)ら村役人により始められた杉の植林事業は北前船発展と相まって巨利をもたらし、植林地は全域に拡大した。現在も旧村域の95%が林野である。木工品の製作やサザエ漁が行われる。浄土ヶ浦など屈曲に富む海岸は隠岐布施海岸として国指定名勝で、大山(だいせん)隠岐国立公園の特別保護地区に指定されている。浄土ヶ浦海域公園もある。

[江村幹雄]

『『隠岐布施村の林業』(1963・布施村)』『『布施村誌』(1986・布施村)』


布施(大阪府)
ふせ

大阪府中東部、東大阪市の一地区。旧布施市。旧大和(やまと)川の本流の長瀬川流域の低湿地。地名は、行基(ぎょうき)が飢えに苦しむ人々のために布施屋を設けたことに由来する。水害に苦しめられていたが、18世紀初頭、旧大和川の付け替え後新田が開発され、河内木綿(かわちもめん)の産地となった。大正期に現近畿日本鉄道奈良線や大阪線が通じ、撚糸(ねんし)、鋳物、ゴムなどの零細企業から、ミシン、車両など中小規模の金属・機械工業が発達した。布施駅周辺に商店街が形成されている。一方、旧自然堤防上には近畿大学などの学校が設置され、市の中心となった。大阪中央環状線(府道2号)とそれに重なる近畿自動車道が開通し、金物団地が形成されている。

[安井 司]

『『布施市史』全4巻(1962~1967・布施市)』

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改訂新版 世界大百科事典 「布施」の意味・わかりやすい解説

布施 (ふせ)

サンスクリットdānaの訳で,音訳は檀那である。両語を合わせて檀施ということがあり,布施する者を檀那檀越(だんおつ),檀家ということもある。仏や僧や貧窮の者に衣食を施与することで,仏道修行では無欲無我の実践である。したがって正覚を開くための六波羅蜜の一つにかぞえられる。キリスト教の愛にあたるのが仏教では慈悲であるが,慈悲の実践は布施と不殺生である。日本仏教でも布施はよくおこなわれ,法要があればかならずその後で貧窮者への施しがなされた。今日,葬式のあとで粗供養を出し,銭まきをするなどはこれで,僧侶だけに与えるのを布施というのはその変化である。これに対して,僧侶が経を読み説経するのを法施という。
執筆者:


布施(島根) (ふせ)


布施(大阪) (ふせ)

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普及版 字通 「布施」の読み・字形・画数・意味

【布施】ふし・ふせ

ひろく人に施す。〔荘子、外物〕儒、詩・禮を以て冢を發(あば)く。~小儒曰く、~詩に固(もと)より之れり。曰く、たる麥 陵陂に生ず 生きて布施せざるに 死して何ぞ珠を含むことを爲さんと。

字通「布」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「布施」の意味・わかりやすい解説

布施
ふせ

島根県隠岐諸島,島後東部の地域。旧村名。 2004年 10月に西郷町,五箇村,都万村と合併し隠岐の島町となる。大満寺山,鷲ヶ峰に 10km2の村有林をもち林業が中心。木材加工のほかシイタケ栽培が行なわれる。海岸線は屈曲に富み,浄土ヶ浦は名勝に指定されている。村域の一部は大山隠岐国立公園に属する。島後を縦貫する国道 485号線の起点。

布施
ふせ

大阪府東大阪市西部の地区。旧市名。旧大和川 (現長瀬川) の沖積地に位置し,明治初期までは近郊農業地であったが,大阪市の工業発展に伴って工業地化し,特に 1914年の大阪電気軌道 (現近畿日本鉄道奈良線) 開通後は発展が著しく,衛星都市化した。鋳物,鉄線,金網,ミシン,電気機器などの金属・機械工業や玩具工業が行われる。近畿日本鉄道奈良線と同大阪線の分岐する布施駅付近は中心商店街をなし,商業が活発。

布施
ふせ
dāna

仏教では信者が僧に財物を施すこと,また僧が食を受けてこれに報いるために法を説くことをいい,前者を財施,後者を法施という。これは大切な清浄行として,六念,四摂法,六波羅蜜などの一つに数えられている。また恐怖を免れさせることを無畏施といい,菩薩の行うべき行為として要請されている。今日では僧や寺院に寄進するものを布施という場合が多い。

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百科事典マイペディア 「布施」の意味・わかりやすい解説

布施【ふせ】

大阪府東大阪市西部地区。1937年市制の旧布施市地区で,大阪市街に接し,近鉄奈良・大阪両線が分岐。大阪東部工業地帯をなし,金属,機械,車両,繊維,化学などの工業が盛ん。東部,南部は住宅地。近畿大学,大阪商業大学などがある。

布施【ふせ】

仏教で,施(ほどこし),施物をいう。信者が僧に財物を施すのを財施,僧が信者に教えを説くのを法施,仏・菩薩が世の人の怖畏(ふい)を取り除くことを無畏施という。六波羅蜜(はらみつ)の一つ。

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葬儀辞典 「布施」の解説

布施

僧侶への謝礼。

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世界大百科事典(旧版)内の布施の言及

【東大阪[市]】より

…大阪府東部,大阪市の東に隣接する市。1967年布施市(1937市制),河内(かわち)市(1955市制),枚岡(ひらおか)市(1955市制)が合体,改称。人口51万7232(1995)。…

【檀那】より

…サンスクリットdānaの音訳で,布施の意。梵語と漢語を合わせて檀施とも記す。…

【福田】より

…福徳を生み出す田地の意。田に種子をまくと収穫があるように,仏,僧,父母,貧窮者などに布施すると,未来に功徳が得られるとして,布施する対象を福田といった。三福田(敬田,恩田,悲田)とか八福田など,その数え方はさまざまであるが,なかでも重要なのは,苦しみ悩む者(悲田)の救済事業であって,悲田養病坊,悲田院などが設けられた。…

※「布施」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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