日本大百科全書(ニッポニカ) 「食積」の意味・わかりやすい解説
食積
くいつみ
新年の祝い膳(ぜん)に用いた料理、または蓬莱(ほうらい)飾りに用いた乾物類をいう。江戸時代の食味用語であるが、明治以降は広くは用いていない。新年の祝い膳は、三方(さんぼう)または四方台(供饗膳(くぎょうぜん)ともいい、三方は3面に穴がある。4面に穴のある四方は貴人用)に米、餅(もち)、ダイダイ、かちぐり、干し柿(がき)、のしあわび、エビ、数の子、ごまめ、ユズリハなどを盛り込み、来客に勧めたり、家族も食べた。のちには食積台と称し、保存のきく食品の飾り物だけとなり、日もちのよい煮しめなどを別につくり、これを「おせち」というようになった。食積台は、鏡餅(かがみもち)を二重、三重にして神棚に供え、上にダイダイ、コンブ、エビなどをのせて飾る形で現在に続いており、食積の語は俳題に残っている。江戸川柳(せんりゅう)の「食積は唐崎(からさき)餅は鏡山」は飾り物の食積であり、「掛取へ食積を出す仲直り」「食積を三十日(みそか)に食って叱(しか)られる」の2句は重詰めのおせちである。
[多田鉄之助]