数の子
かずのこ
ニシンの卵およびその加工品。ニシンは「かど」ともよばれるところから、「かどの子」が変じて「数の子」になったという。またニシンの卵巣には5万~10万の卵が含まれるので、数の多い子という意味もあるとされ、子孫繁栄の縁起として正月料理に用いられる。加工品には干し数の子と塩数の子とがあるが、現在、干し数の子はほとんどつくられていない。それは水もどしに時間がかかり、また色が褐色になるためである。塩数の子は海水または同程度の食塩水中に数の子を漬け、血抜きし、水切り後、30%程度のふり塩をし、しばらく置いたのち飽和食塩水中で塩蔵する。塩蔵が終わったものは水切りし、冷蔵庫中に蓄える。食べる前に流水または水をかえながら塩抜きする。
現在、日本ではニシンの漁獲が激減したため、ロシア、アラスカ、カナダなどから抱卵ニシンまたは数の子を輸入して製造している。しょうゆ漬けとして正月料理には欠かせぬものだが、ひどく高価なものとなってしまった。そのため、輸入シシャモ(原名カペリン)の卵から模造品がつくられている。数の子はタンパク質、ヨードなどに富み、栄養価は高いが、卵膜がケラチンのため消化されにくい。
[金田尚志]
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数の子
かずのこ
にしんの卵巣を乾燥または塩漬にした食品。にしんのことを東北地方では古くカドと呼んだところから,カドの子の転訛したものとも,にしんの卵の数が多いことから数の子になったともいわれる。祝儀には欠かせない食品で,御節料理や結婚の祝い料理に用いられる。栄養価は高く,干し数の子の場合蛋白質 65%,脂肪 10%程度含まれる。ただし卵膜の性質上消化されにくい。近年にしんの不漁により高価な食品となっている。
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数の子[加工食品]
かずのこ
北海道地方、北海道の地域ブランド。
主に留萌市で生産されている。室町幕府の終り頃から、裏日本の海上交通の発達にともない、京都の宮中、幕府に献上されていた。留萌で原料となるニシンが獲れなくなったことから、現在は、カナダやアラスカなどから輸入し数の子の加工をおこなっている。特に塩数の子は全国シェアの約50%を占めており、留萌の数の子として名高い。
出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域ブランド・名産品」事典 日本の地域ブランド・名産品について 情報
数の子【かずのこ】
ニシンの卵巣を乾燥または塩漬にしたもの。子孫繁栄の縁起として江戸時代から新年・婚礼などの祝料理に使用。コンブやワカメに卵を産みつけたものを,そのまま塩漬にした子持ちコンブ,子持ちワカメがある。
→関連項目ニシン
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デジタル大辞泉
「数の子」の意味・読み・例文・類語
かず‐の‐こ【数の子】
《「かど(鰊)のこ」の音変化から》ニシンの卵巣を塩漬けにしたり乾燥させたりした食品。「数の多い子」と子孫繁栄の意にとって、新年・婚礼などの祝儀に用いる。《季 新年》「―に老の歯茎を鳴らしけり/虚子」
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数の子
ニシンの卵巣で,乾燥したり塩水漬にして製品とする.
出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報
かずのこ【数の子】
ニシンの卵巣。ニシンの異名を〈かど〉と呼ぶので,〈かどの子〉から転じたものであろうが,その変化には,めでたく言い換えることによって,食品の格の転換をはかるという,料理人などの知恵と計算があったと考えられる。つまり,一腹に数万の卵粒があるところから,〈かどの子〉は〈数の子〉で,子孫繁栄を意味するという解釈をしてみせて,権力者のきげんをとり結ぶというやり方である。そして,その試みは図にあたった。その時期は室町後期と考えたい。
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世界大百科事典内の数の子の言及
【水産物貿易】より
…世界の漁業総生産量の十数%程度が貿易にあてられている。その比率に大きな変化はないが,水産物貿易の内容は近年大きく変わってきている。世界を発展途上国と先進国の二つに分けると,漁業生産量では先進国がその比率を高めているものの,ほぼ半々である。需要サイドからみると,発展途上国は需要の9割が食糧用だが,先進国では食糧用は6割で残りの4割が飼料用である。先進国では高級魚は直接消費し,低級魚は家畜に食べさせ,肉にかえて人間が消費するのである。…
【ニシン(鰊∥鯡∥春告魚)】より
…ニシン目ニシン科を代表する太平洋北部に広く分布する寒帯性の回遊魚(イラスト)。各地でカド,カドイワシなどとも呼ばれる。大西洋北部にもたいへんよく似たヘリングC.harengus(英名herring)が分布し,ノルウェー沿岸,北海およびアメリカ大陸ニューファンドランドに多く産する。日本では北海道と,太平洋側は利根川以北,日本海側は富山県以北に分布する。海産魚ではあるが,汽水にも耐えられ,海とつながる湖に入ることもあり,北海道の能取(のとろ)湖,茨城の涸沼(ひぬま)などにも生息する。…
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