日本大百科全書(ニッポニカ) 「香時計」の意味・わかりやすい解説
香時計
こうどけい
香炉の中に、香型とよばれる定規を用いてジグザグ模様に抹香(まっこう)を埋め、一端から火をつけ時間の経過を測るもの。たとえば明(あけ)六つから暮(くれ)六つまでとすれば、6等分して時刻札を立てて使用した。香時計は中国で発明されたもので、機械時計出現以前に日本に伝えられ、明治の改暦(1873)まで使われていた。時香盤(じこうばん)、香盤時計とよばれるが、この時計は古くから寺院などで香または火を絶やさぬために用いられたことから常香盤(じょうこうばん)の名もある。香時計には抹香のほか線香を利用するものも含まれる。これは1本の線香の燃焼時間を単位として時間を測るものである。江戸時代から大正時代まで芸妓(げいぎ)置屋などで用いられて、芸者の勤め時間は線香何本と数えられた。
[元持邦之]