高スピン錯体(読み)コウスピンサクタイ

化学辞典 第2版 「高スピン錯体」の解説

高スピン錯体
コウスピンサクタイ
high-spin complex

遷移金属錯体の中心金属イオンのd軌道は,配位子場のなかで分裂する([別用語参照]配位子場理論).しかし,有機化合物の場合と異なり,軌道エネルギーの分裂が大きくないので,電子の配置は,場によって分裂した軌道エネルギーと電子対形成に要するエネルギーによって決まる.すなわち,弱い配位子場においては,平行スピンの電子数が最大の場合が基底状態になり,一方,強い配位子場では,スピンが対をつくる電子配置が基底状態になる.前者を高スピン錯体,後者低スピン錯体という.すべての電子が対をつくる場合も低スピン錯体という場合もあるが,それらは反磁性錯体とよぶほうがよい.八面体型錯体では,中心金属イオンのd電子数が4から7までの錯体について,高スピン錯体,低スピン錯体が現れる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の高スピン錯体の言及

【錯体】より

…分裂エネルギー差が大きくない場合には,エネルギーの高いほうのdγ軌道に入っても対をつくらないほうが全体としてエネルギーが低くなる。これを高スピン錯体(スピン自由型錯体)という。錯体中の配位子が水溶液中で水あるいは他の配位子により置換される反応の速度は,個々の配位子の種類にはあまり関係がなく,錯体の電子状態によりほぼ決まってしまうことがタウベH.Taube(1952)により指摘された。…

※「高スピン錯体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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