鬼丸(読み)おにまる

精選版 日本国語大辞典 「鬼丸」の意味・読み・例文・類語

おにまる【鬼丸】

  1. [ 一 ] 太刀の名。粟田口国綱作。御物。源氏相伝の宝剣で、はじめ「鬚切」といったが、源頼光家来渡辺綱が鬼を切ったため改称されたともいい、また、火鉢の足になっている銅製の鬼を切り怨霊を退けたところからの称ともいう。新田義貞足利義昭豊臣秀吉と伝わり、室町時代に天下五剣の一つに数えられた。形状は木質の鞘、柄の上にただちに金具をかけ、その上を皮で包み黒漆をかけたもので、鐔覆がある。
    1. [初出の実例]「小鬼の頭をかけず切てぞ落したる〈略〉此の太刀を鬼丸(ヲニマル)と名付て」(出典:太平記(14C後)三二)
  2. [ 二 ] 狂言。和泉流番外曲。観音が旅僧の姿になって、老父を養うためにひそかに山賊をしている鬼丸の悪心をひるがえさせる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の鬼丸の言及

【渡辺綱】より

…その後,安倍晴明の勘文に従って物忌(ものいみ)に服するが,難波の渡辺から上京した養母の懇望にまけて鬼の腕を見せると,養母はたちまち鬼と変じて破風(はふ)から飛び去った。それより渡辺党では破風を作らず,家屋は東屋(あずまや)造とするとされ,鬚切を鬼丸と改名したと伝える。同書にこの鬼は物ねたみから貴船明神に祈って鬼女となった宇治の橋姫であったと伝えるところからすると,この鬼は本来は水神で,河童が馬を水に引き込もうとして腕を切られ,それを取り返しに来る話と同源の話であったと思われる。…

※「鬼丸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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