① 鯨を捕えるのに用いる船。特に江戸時代の勢子船(せこぶね)をさしていうことが多い。当時の捕鯨業は勢子船、持双船(もっそうぶね)、双海船(そうかいぶね)などで編成され、なかでも直接鯨に接近してモリを打ち込む勢子船は快速と敏捷性が求められたため、船団の象徴とされた。ふつう八丁櫓の小船であった。《 季語・冬 》 〔俳諧・毛吹草(1638)〕
② 江戸時代に、勢子船の敏捷な性能を生かしてほとんどそのままの船型につくられた小型の軍船。幕府水軍、また諸侯の御座船のつき添いや使者船のつき添いに使われた。黒塗りのほか白木造りのものもあり、たとえば幕府の御召塗鯨船は、長さ三一尺五寸(約九・四六メートル)、幅九尺(約二・七〇メートル)、深さ二尺七寸八分(約八三センチメートル)の八丁櫓であった。