捕鯨業で直接クジラをとる船。キャッチャーボートcatcher boatともいう。キャッチャーボートの大きさは南極海の母船式捕鯨に参加する800トン型のものから,近海捕鯨に従事する200~350トン型のものがある。さらに小型クジラを対象としている小型捕鯨業においては50トン以下の船も使用されている。性能面では,クジラを追尾し,これを捕獲するために高速力と旋回性能が要求される。大型のキャッチャーボートでは最大19ノット程度の速力をもち,日本から南極海まで補給なしで航行できる航続能力を備えている。また,悪天候中でもクジラを自由自在に追尾するため,十分な復原性能と捕鯨砲の命中率を高めるために,船のローリングは適当にゆるやかでなければならない。船首前端に砲座があり,その上に捕鯨砲が装備される。その前端に径1mの綱繰台をおき,もり綱を巻いておく。もり綱の他端は上甲板上の捕鯨ウィンチのドラムを通り,甲板下の綱庫に収められる。探鯨のためには,前部マスト上に見張台を設け,追鯨中にはここより操船の指示を行うときがある。操舵室と船首の砲座の間には砲手の移動や連絡のため,ガンナースパッセージと呼ばれる通路が設けられているのが,外観上の大きな特徴である。さらに船首船底には探鯨機を装備している。
母船式捕鯨業の1船団の規模は捕獲枠が減少したため,捕鯨母船1隻とキャッチャーボート4隻から構成されている。このほかに鯨肉を冷凍し運搬するために,冷凍運搬船が3~4隻交互に参加する。捕鯨母船は船尾部に鯨体引上げのため,スリップウェーを設ける。上甲板中央部にアーチ形をしたウィンチ台を設け,その上に40t巻きウィンチを2台設置し,スリップウェーから鯨体を引き上げるのに用いる。広い解剖甲板は鯨体処理に用いられ,7~15t巻きのウィンチが30~40台備えられている。玄側のウィンチの間にはいくつものマンホールがあり,これには小さく切った採油原料を投入する。このマンホールは下の工場甲板にある採油ボイラーの原料取入口につながっている。工場甲板にはハルトマンボイラーやクワナーボイラーといった皮,骨などそれぞれの原料に適した製油ボイラーが設置されている。処理しやすい大きさに切った鯨肉は7~10mの大きさの作業艇(大発艇)により,冷凍運搬船に運ばれる。冷凍運搬船においては約20kg入り冷凍パンに鯨肉を入れ,約8時間で-30℃に凍結する。しかし,この冷凍運搬船の数を減らすため,捕鯨母船内に凍結能力200~250t/dの冷凍設備を新設した母船が多い。
→捕鯨
執筆者:竹内 正一
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…また,92年には和船の改良型として長さ11mのヤンノー型が出現した(その後の日本の漁船史については後に詳述する)。
[漁船の特徴]
127トン未満のサケ・マス流し網漁船がベーリング海,500トン未満のマグロ漁船がニュージーランド沖およびアフリカ沖,800トン級の捕鯨船が南氷洋へ出漁するように,漁船は小型の割合に航行範囲が広く,一般船のような特定の航路をもたない。このため荒天に遭遇することが多いので,十分な復原性,耐航性が必要である。…
…母船に付属して漁業を行う漁船をいい,母船にのせずに日本の基地から漁場に独航することから生じた名称である。各種の母船式漁業には独航船が付属しているが,母船式捕鯨業においては捕鯨船(キャッチャーボート)とよばれている。母船式サケ・マス流し網漁業における独航船は1船団に43隻付属しているが,すべて124トン型である。…
※「捕鯨船」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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