二等辺三角形を上下左右につなぎながら展開していった文様。二等辺三角形を左右の方向、つまり帯状に並列したものを鋸歯文(きょしもん)、ないし山形文とよんで鱗文と区別することもある。この文様の歴史は古く、埴輪(はにわ)や古墳の壁面に朱や青の彩色を加えて表されていることが多い。そのためこの文様を原始信仰のシンボルとみる説もある。しかし、奈良時代から鎌倉時代にかけては衰微し、わずかに庶民の衣服の模様として絵巻に散見するだけである。室町時代に入ると、明(みん)から舶来した名物裂(めいぶつぎれ)のなかにこの文様を使った針屋、井筒屋、権太夫(ごんだゆう)といった裂があり、ふたたび文様史の上層部に浮かび上がってくる。その結果として、武家の陣羽織や能装束にまで取り上げられるようになり、とくに能装束では、金銀の摺箔(すりはく)で表された鱗箔が、蛇体を表す女役の衣装の模様として有名である。
[村元雄]
…幾何学文様としては,三角形の単位を並列させた鋸歯文,斜めに並べた階段文も広くみられる。また半円形を魚鱗状に重ねる鱗文もギリシア,ローマ,西アジアで多く見られる。三角形の鱗文は,発生も古く,世界各地に分布している。…
※「鱗文」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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