福岡市博多(はかた)の名物菓子。祇園山笠(ぎおんやまがさ)で知られる櫛田(くしだ)神社所蔵の『博多津要録』によれば、この菓子の創製は1671年(寛文11)である。この年10月15日、博多呉服町の豪商大賀(おおが)家は、自邸の書院落成に福岡藩主黒田光之(みつゆき)を招いて、茶うけに鶏卵素麺を進上した。仕法の妙を嘉賞(かしょう)した光之は、創作者である大賀家の番頭、松屋利右衛門を召し出し、福岡藩御用菓子司を申しつけた。利右衛門は、長崎で点心に長じた明(みん)国人から製法を習得したと伝えられている。鶏卵素麺の製法は、氷砂糖を糖蜜(とうみつ)として沸騰(ふっとう)させ、その中に卵黄をところてんのように突き出す。生(なま)の黄身は突き出されると同時に熱でそうめん状に固まる。これを引き上げて冷まし、30センチメートルほどの長さに切りそろえる。
[沢 史生]
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