日本大百科全書(ニッポニカ) 「黒人法」の意味・わかりやすい解説
黒人法
こくじんほう
Black Codes
南北戦争直後の1865~66年に、アメリカ合衆国の南部諸州議会で広く制定された「浮浪者」「徒弟」「契約労働」「犯罪」「所有権」「市民権」などについての法律の総称で、解放黒人を対象としたもの。州により表現や規制、制限の程度の差はあったが、黒人の血が8分の1以上流れていると認められた人間を「黒人」と規定し、黒人は白人との結婚を厳しく禁じられ、武器の携行は認められず、夜間外出は制限されるなどの共通点があった。また、裁判では黒人が関係した事件に限って証人になれたが、陪審員にはなれなかった。黒人には投票権はなく、土地所有は大幅に制限され、移動の自由、農業や召使い以外の職業につく自由はなく、たいした理由もなく逮捕され、むち打たれ、労働契約を破って逃亡すれば射殺されることもあった。黒人は酒類を売ることも買うことも禁じられた。奴隷時代と大きく異なる点は、白人同様に法の適用対象になるという「人間的権利」を与えられたことにあるが、それは解放黒人を奴隷とほとんど変わらない不自由労働者として土地に緊縛し、また南北戦争(1861~65)中から進んでいた黒人による民主化闘争を圧殺するという旧奴隷所有者=プランターの経済的、政治的意図が働いていたからであった。
[竹中興慈]