証人(読み)しょうにん(英語表記)witness; Zeuge

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

証人
しょうにん
witness; Zeuge

(1) 民事訴訟法上,自己が経験により認識・知覚した事実裁判所供述する第三者をいう。証拠方法の一つである。経験事実を証言するのに特別の知識,経験を要する場合には,鑑定証人と呼ばれる。日本の裁判権に服する者は,すべて証人義務を負うが,特定の公務員に対しては職務上の秘密を尋問するには一定の制限がある。証人義務の内容は出頭,宣誓,供述であるが,これらの義務の違反には制裁が課せられる。また法律が定める場合または法律が定める一定の職業従事者に証言・宣誓拒絶権が認められる。

(2) 刑事訴訟法上,刑事被告事件の公判審理のために裁判所または裁判官の面前で,尋問された事項につき自己の体験した事実に基づいて供述する第三者をいう。担当の裁判官,公判立会いの検察官,弁護人,被告人などは証人とはなりえず,鑑定人とも区別される。証人は原則として出頭,宣誓,証言の各義務を負うが,公務員については職務上の秘密保持のため監督官庁の承諾がなければ証人として尋問できない。また自己または近親者が刑事訴追を受け,有罪判決を受けるおそれのある事項について,および医師,弁護士など特殊な業務の者は業務上の秘密事項につき証言拒絶権が認められている。証人は人的証拠として最も重要なものであるから,被告人はすべての証人に対して審問する機会を十分に与えられ,公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を保障されている。

(3) 衆,参両議院は,審査および調査のため,証人の出頭,証言を求める権限をもち,証人の不出頭,宣誓拒絶,偽証などについては制裁がある。

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デジタル大辞泉の解説

あかし‐びと【証人】

事実を証明する人。しょうにん。
「其を救う為の一個(ひとり)の―にならねばならぬ」〈木下尚江火の柱

しょう‐にん【証人】

ある事実を証明する人。ある事を証明するために事実を述べる人。「遺言書の作成に証人として立ち会う」
ある人の身元・人柄などを保証する人。保証人。
裁判所その他の機関から、自己の知ることのできた事実を供述するよう命じられた第三者。「証人を喚問する」
江戸時代幕府人質の意味をもって、江戸屋敷に居住させた大名妻子

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百科事典マイペディアの解説

証人【しょうにん】

裁判所その他の機関から命ぜられて,自己の経験により知り得た事実を述べる者(刑事訴訟法143条以下)。当事者以外の第三者に限る。日本の司法権に服する者はすべて証人として出頭し,宣誓し,陳述する義務を負う。ただし,国務大臣,国会議員その他の公務員は,職務上の秘密を守るため証言義務を免除されることがある。また一定の場合には証人に証言拒絶権(証言)が認められる。→偽証罪守秘義務
→関連項目勾引交互尋問裁判権参考人受命裁判官召喚証拠隠滅罪犯罪被害者保護法

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世界大百科事典 第2版の解説

しょうにん【証人】

裁判所その他の国家機関に対し自己の経験により知ることのできた事実を供述する第三者。その供述が〈証言〉である。裁判所で証言する証人の資格,権利・義務,尋問方法等は,民事訴訟法・刑事訴訟法に定められている。このほか国会の両議院はその国政調査権に基づき証人を喚問して証言を求めることができる(憲法62条,衆議院規則53,54,257条,参議院規則182~185条,議院証言法)。また地方議会にも類似の制度がある(地方自治法100条)。

しょうにん【証人】

(1)江戸時代の金銭債務および明治初年の金穀債務における保証人を意味した語。奈良時代以来保証人には,債務者が逃亡しないことを保証し,逃亡もしくは死亡の場合に代償する〈保人〉系統のものと,債務者が債務を弁済しない場合に債務者に代わって弁償する〈償人〉系統のものとの2種類があった。江戸時代の証人は,初めは当然に償人的義務を負い,ただ債務証書に,債務者が死亡もしくは失踪した場合につき,証人が責任を負うとの文言(死失文言)が記されている場合に限り,保人的義務を負うものとされた。

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大辞林 第三版の解説

しょうにん【証人】

事実を証明する人。証拠人。 「 -になる」
保証人。
〘法〙 裁判所などの裁判権を行使する機関から、自己の経験により認識しえた事実の供述を命ぜられた第三者。
近世、諸大名が幕府に対する忠誠の証あかしとして差し出した人質。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

証人
しょうにん

裁判所その他の機関(国会の両議院、地方議会)に対し自己の経験から知りえたことを供述するよう命ぜられる第三者をいう。[内田一郎]

刑事訴訟における証人

人証の一種で、訴訟外において実際に経験した事実を裁判所に対して陳述する訴訟の第三者をいう。
(1)証人には出頭の義務があり(刑事訴訟法150条、151条、152条、153条の2、162条)、宣誓の義務があり(同法154条、160条、161条)、証言の義務がある(同法160条、161条)。宣誓した証人が虚偽の陳述をした場合は偽証罪に問われる(刑法169条)。守秘義務を負う公務員または公務員であった者が知りえた公務上の秘密に関する事実について証人尋問をするには、当該監督官庁(刑事訴訟法144条本文)、衆議院または参議院(同法145条1項1号)、内閣(同法145条1項2号)の承諾を要する場合がある(同法144条但書、145条2項)。他方、証人の権利として、何人(なんぴと)も自己または法定の近親者が刑事訴追を受けまたは有罪判決を受けるおそれのある証言を拒むことができる(証言拒絶権)(同法146条、147条)。憲法第38条1項の自己負罪拒否特権に基づく権利である。ただし、2016年(平成28)の刑事訴訟法改正により、いわゆる刑事免責制度が導入されたので、証人に刑事免責を付与してその証言拒絶権を消滅させたうえ、証人の証言義務に従って証言を強制することが可能となった(同法157条の2、157条の3)。また、一定の職にある者またはあった者は、業務上委託を受けたために知りえた他人の秘密に関する事実について、原則として証言を拒むことができる(同法149条)。なお、証人には、旅費・日当・宿泊料の請求権がある(同法164条1項)。
(2)証人保護の制度として、第一に、公開法廷における証人保護として、2007年の刑事訴訟法改正は、性犯罪等一定の事件の場合に、被害者証人の氏名・住居その他被害者を特定させる事項を公開の法廷で明らかにしない決定(被害者特定事項の秘匿)をすることができることとなった(同法290条の2)。この証人保護は、2016年の刑事訴訟法改正により、被害者以外の証人一般に認められることになり、証人に対する加害のおそれや証人の平穏が害されるおそれがある等の場合に、証人等を特定する事項を公開の法廷で明らかにしない秘匿決定をすることができるようになり(同法290条の3)、その他起訴状や証拠書類の朗読にあたっての証人特定事項の秘匿決定も可能となった(同法291条2項・3項、305条3項・4項、295条4項)。第二に、被害者等の証人尋問の方法について、2000年の刑事訴訟法改正により、いわゆるビデオリンク方式の証人尋問が可能となった。裁判所は、同一構内にある公判廷以外の場所に証人を在席させ、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話することのできるビデオリンク方式によって尋問することができる(同法157条の6第1項)。なお、2016年の刑事訴訟法改正により、上記の同一構内に限ったビデオリンク方式が改められ、同一構内以外の場所(たとえば遠隔地の裁判所)でのビデオリンク方式による証人尋問も可能となった(同法157条の6第2項)。また、被告人や傍聴人の面前で証言することの精神的負担を軽減するため、証人と被告人や傍聴人との間に衝立(ついたて)などの遮蔽(しゃへい)措置をとることができることとなった(同法157条の5)。さらに、証人が著しく不安または緊張を覚えるおそれがある場合には、適当な者を証人付添人とすることができるとされた(同法157条の4)。第三に、証拠開示における証人保護措置として、まず1999年(平成11)の刑事訴訟法改正は、検察官は、証人等の身体・財産への加害行為等を防止するため、証人等の住所等を関係者に知られないようにする配慮を求めることができるとしたが(同法299条の2)、2007年の刑事訴訟法改正により、被害者特定事項を被告人等に知られないようにすることを求めることができるとされ(同法299条の3)、さらに、2016年の刑事訴訟法改正により、証人等の氏名・住所を被告人に知らせない旨の条件付開示の措置(同法299条の4第1項)または氏名にかわる呼称や住居にかわる連絡先を知る機会を与える代替開示の措置が認められた(同法299条の4第2項)。[内田一郎・田口守一]

民事訴訟における証人

民事訴訟の証人とは、裁判所の命により自ら過去において実験した具体的事実を裁判所において供述すべき訴訟の第三者をいう。証人の証言によって、当事者の事実上の陳述の真偽を判断するものであるから、当事者および当事者を代表する法定代理人には、証人としての適格はないが、そのほか、事実を認識することができ、かつ裁判所でそれを供述できる者には、すべて証人としての能力がある(民事訴訟法190条以下)。したがって、民事事件について、とくに規定ある場合のほかは、日本の司法権に服する者はすべて証人として出頭・宣誓・供述すべき公法上の義務があり、その拒否に対しては制裁を科せられ、また宣誓をしたにもかかわらず虚偽の供述をしたときは、偽証罪として処罰される。ただし、同法第196条、197条所定の公務上あるいは職業上の秘密に関する事項および証人またはその親族等の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するときは、証人は証言を拒める。これらの人には証言拒絶権が認められている。[内田武吉・加藤哲夫]

議会における審査・調査

国会の各議院もしくは普通地方公共団体の議会が、議案その他の審査または調査のため、必要あるとき、強制的に出頭させ証言させる人をいう(日本国憲法62条、衆議院規則53条、257条、参議院規則182条、地方自治法100条)。明治憲法の時代は、各議院は人民を召喚することができなかった(議院法73条)ので、調査権はきわめて弱かった。
 それにひきかえ日本国憲法においては、国政調査権強化のために、各議院に裁判所に準ずる証人出頭要求権などが与えられ(憲法62条)、その実施のための細目として証人喚問の手続を定めた「議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律(議院証言法)」が制定された。それによれば、各議院から証人として出頭を求められればそれに応ずることが義務とされ(1条)、宣誓した証人が虚偽の陳述をすれば3か月以上10年以下の懲役に(6条)、理由なく出頭せず、または宣誓・証言を拒んだときは1年以下の禁錮または10万円以下の罰金に処せられる(7条)。ただし公務員について職務上の秘密に関して証言を求められたときは、行政庁の承認が必要とされる(5条)。このような調査のための証人出頭要求権は、普通地方公共団体の議会についても定められており、不出頭・証言拒絶に対しては6か月以下の禁錮または10万円以下の罰金に処せられることになっている(地方自治法100条)。[池田政章]

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世界大百科事典内の証人の言及

【留守居】より

…初期には将軍が江戸城を離れることも多かったので,その地位も重く,元老級の譜代の老臣を〈大留守居〉に任命し,将軍留守中は江戸城守衛の総指揮権を与え,平時も老臣の一員として政務を担当させることもあった。また初期には諸大名が人質として幕府に登録し,江戸藩邸に常住させた〈証人〉の身柄を管理するのも重要任務であった。さらに1635年(寛永12)からは金銀収納の役も加わった。…

※「証人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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