日本大百科全書(ニッポニカ) 「龍鬚溝」の意味・わかりやすい解説
龍鬚溝
りゅうしゅこう / ロンシュイコウ
現代中国の作家老舎が新中国成立直後に書いた三幕劇。1950年発表。龍鬚溝は北京(ペキン)の天壇の裏側の貧民街に悪臭を放って流れるどぶ川。第一幕は、旧中国の象徴のようなこのどぶから離れられぬ庶民の貧しく悲しい生活が活写される。第二幕は、解放後人民政府がどぶの改修にかかる。初め住民は信用せず協力しない。だが新政府は税金もとらず工事を進め、大雨で水があふれたときも献身的に住民を救助するので、今度のお上はこれまでと違うと驚く。第三幕は、住民総がかりの協力でどぶは地下に移されりっぱな道路になる。町をあげて大喜びのなかで、住民は人間的にも生まれ変わっていく。新中国誕生の民衆の歓喜に対する直截(ちょくせつ)な表現は大きな反響をよび、1951年老舎はこの作品で北京市政府より人民芸術家の称号を送られた。
[伊藤敬一]
『黎波訳『老舎珠玉』(1982・大修館書店)』