日本大百科全書(ニッポニカ) 「Ambarvalia」の意味・わかりやすい解説
Ambarvalia
あむばるわりあ
モダニズム文学の旗手、西脇(にしわき)順三郎の代表詩集。ラテン語で、古代ローマの農業神、ケレスを祀(まつ)る儀式の意。1933年(昭和8)椎(しい)の木社刊行。近代詩の詩的思考や方法に革命的な衝撃を与えた現代詩の金字塔として、詩史的意義は不滅である。ヘレニズム的感覚と思惟(しい)の調和したイマジズムの「ギリシヤ的抒情(じょじょう)詩」、ローマ文学の引喩(いんゆ)をちりばめた「拉典(ラテン)哀歌」、『ベニスの商人』のパロディー「紙芝居Shylockiade」、イバン・ゴルと彼の妻、クレールの合同詩集『POÈMES D'AMOUR』(1925)の訳詩「恋歌」など、『三田文学』『詩と詩論』『椎の木』『尺牘(せきとく)』『Madame Blanche』に発表した作品を集成。別に敗戦体験を媒介に、東洋的な「玄」の世界に回心した、異本『あむばるわりあ』(1947・東京出版社)がある。
[千葉宣一]
『『Ambarvalia』復刻版(1966・恒文社)』▽『『西脇順三郎全集 1』(1971・筑摩書房)』