ケレス(読み)けれす(その他表記)Ceres

翻訳|Ceres

デジタル大辞泉 「ケレス」の意味・読み・例文・類語

ケレス(〈ラテン〉Ceres)

ローマ神話豊穣ほうじょう女神ギリシャ神話デメテルと同一視された。セレス
準惑星の一。1801年、イタリアのピアッチが火星木星公転軌道の間で発見。当初は惑星と思われたが、近くで同様に小さな天体が次々と発見されたため、それらとともに小惑星に分類され、その第1号とされた。2006年、国際天文学連合が設けた新区分の「準惑星」に分類し直された。直径は約1000キロで、周囲の小惑星より格段に大きい。セレス。

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精選版 日本国語大辞典 「ケレス」の意味・読み・例文・類語

ケレス

  1. ( [ラテン語] Ceres )
  2. [ 一 ] ローマ神話の農耕の女神。
  3. [ 二 ] ( [ 一 ]にちなむ ) 最初に発見された小惑星の名。一八〇一年、イタリアのG=ピアッツィが偶然発見。直径一〇〇三キロメートル。絶対実視等級三・七六等。公転周期四・六〇年。二〇〇六年、国際天文学連合が新たに定義した準惑星となった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケレス」の意味・わかりやすい解説

ケレス(小惑星)
けれす
Ceres

小惑星。1801年1月1日、イタリア、シチリア島のパレルモ天文台長ピアッツィが発見した第一号小惑星。数学者ガウスにより軌道が計算され、火星と木星の間で太陽の周りを公転する新惑星であることが確かめられた。軌道の半長径2.77天文単位(4億1400万キロメートル)、離心率0.078、軌道傾斜角10.6度、公転周期4.6年である。衝のころの平均光度は7.9等で、直径は1003キロメートルと求められており、表面の反射能は0.054でかなり暗い色をしている。2006年以降、国際天文学連合(IAU)総会で定義された準惑星となる。

[村山定男]



ケレス(古代ローマの女神)
けれす
Ceres

古代ローマの古い穀類の女神。今日知られる限りでは、ローマ固有の祭祀(さいし)をもつこの女神の聖所は確認されていない。つまり、ケレス崇拝は完全にギリシア的であり、ギリシアの影響によって成立したといわれる。紀元前496年にギリシアのデメテルとディオニソスの宗教がローマに移入され、さらにその3年後、初めてケレスの神殿がアウェンティヌスの丘に奉献されると、ローマ古来の女神の姿は失われ、今日知られているようなデメテルと同一視されたケレス崇拝ができあがった。

 またそれまでローマの諸神殿はエトルリア人の方式を手本としてきたが、ここに初めてギリシア様式およびギリシアの絵画や彫像による装飾が用いられたという。デメテルなどの穀類や酒の神々が迎え入れられたのは、ローマがエトルリアとの戦争により国土が疲弊し、飢饉(ききん)に襲われたからで、このことから、ケレスは大地母神と類似した性格をもっていたことが知られる。ケレスの祝祭はケレアリアCerealiaとよばれ、4月19日がその祭日であった。

[伊藤照夫]

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改訂新版 世界大百科事典 「ケレス」の意味・わかりやすい解説

ケレス
Ceres

古代イタリアの穀物の女神。古くからギリシアのデメテルと同一視されたため,ケレス本来の職能等は不明の部分が多く,ローマ固有の神話も伝わらない。古代の史家によれば,ローマの町が大飢饉に襲われた前496年,シビュラ予言書の啓示をうけて,ケレスほか2神に神殿造営が誓約され,その3年後,アウェンティヌス丘の麓にできあがった神殿がケレスに奉献されたという。この神殿は,ローマでは穀物の取引がおもに平民の手で行われていたところから,のちに平民の活動拠点となった。祭儀はケレアリアCerealiaと呼ばれ,もともと4月19日が祭日であったが,前3世紀末以降は,4月12日から8日間にわたって行われた。
執筆者:


ケレス
Ceres

セレスともいう。1801年イタリアのパレルモ天文台で,G.ピアッチによって発見された第1号の小惑星。彼の6週間にわたる観測結果からC.F.ガウスが軌道決定を行い,この天体がボーデの法則から予測されていた火星と木星の軌道の間を公転する小天体であることを確かめた。ケレスの直径は約1000kmで小惑星中最大であるが,衝のときの平均光度は7.6等で肉眼で観測するのは困難である。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「ケレス」の意味・わかりやすい解説

ケレス

セレスとも。1801年イタリアのG.ピアッツィが発見した第1号の小惑星(ケレスは現在では準惑星に分類される)。火星と木星にはさまれた小惑星帯にある。軌道長半径2.77天文単位。直径約1000km。
→関連項目小惑星特異小惑星ボーデの法則

ケレス

古代ローマの豊穣の女神。ギリシア神話デメテルと同一視される。
→関連項目穀霊

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ケレス」の意味・わかりやすい解説

ケレス
Ceres

準惑星一つ。かつて小惑星に分類され,そのなかで最大とされたが,2006年以降準惑星に分類されることになった。直径 910km,公転周期 4.6年。 1801年1月1日ジュゼッペ・ピアッツィが発見。その後見失ってしまったが,数学者カール・フリードリヒガウスによって最小二乗法による軌道計算がなされ,同年 12月 31日にウィルヘルム・オルバースが再発見した。

ケレス
Ceres

ローマ神話の女神で,ギリシア神話のデメーテルと同一視された。作物の生育と成熟を司る母神として,地母神テルスと密接に結びつけられていたが,デメーテルの影響で,ディオニュソスと同一視されたリベルやペルセフォネと同一視されたリベラの両神とともにギリシア的な祭祀を受けるようになり,デメーテルとまったく同化した。

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世界大百科事典(旧版)内のケレスの言及

【ケシ(芥子)】より

…【森田 竜義】
[シンボリズム]
 ケシはまず安眠の象徴である。ローマ神話の眠りの神であるソムヌスSomnusは女神ケレス(ギリシア神話のデメテル)に,彼女をよく眠らせるためにケシを与えたといわれる。これはケシの実から精製したアヘンが催眠性,麻酔性をもつことによる。…

【オルバース】より

…これはオルバースのパラドックスと呼ばれ,近代の宇宙論的思考の発端となった。 オルバースは小惑星の発見にも意欲的で,1802年1月2日に第1号ケレスを再発見し,同年3月28日に第2号パラスを,07年3月29日には第4号ベスタを発見した。これらの小惑星が類似の軌道をもつことから,一つの惑星の爆発による小惑星起源説を提唱した。…

【ガウス】より

…96年正十七角形の作図法を発見,98年にはゲッティンゲンを去り,翌年ヘルムシュテット大学から〈代数学の基本定理〉の証明などによって学位を得た。1801年,それまでの整数論研究を集成した画期的著作《数論研究》を刊行,新しく発見された小惑星ケレスの軌道計算の成功と相まって,数学上の名声を不動のものにした。07年,ゲッティンゲン大学天文台長のポストを供与され,これを受諾した。…

【天文学】より

…《天体力学》は主として太陽系の力学的諸問題を取り扱った。太陽系の惑星については1801年に小惑星の第1号ケレスがイタリアのG.ピアッツィによって発見され,以後その数は急速に増した。この小惑星の発見に伴って,C.F.ガウスによって〈軌道論〉が開拓された。…

※「ケレス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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