内科学 第10版 「Fabry病」の解説
Fabry病(全身性代謝疾患に伴う二次性心筋症)
a.Fabry病
Fabry病はαガラクトシダーゼの欠損による伴性劣性遺伝性疾患で,スフィンゴ糖脂質の蓄積によって生じる.古典的Fabry病は神経系,腎臓,心臓,皮膚(皮角血管腫),眼などの諸臓器の障害で発症する.心臓に限局して左室肥大を主徴とする場合は心Fabry病とよばれる.心病変は肥大型心筋症と同様の形態をとる.高血圧,狭心症,心不全などによる症状を呈する.臨床症状を示すのはほとんど男性である.診断は心エコーによる形態診断と血中αガラクトシダーゼ活性により行う.遺伝子診断も行われる.確定診断は心筋組織の病理検査で,特徴的な泡沫化したレース状の心筋,電顕では層状の異常構造物を認める(図5-13-24).αガラクトシダーゼ酵素補充療法が実用化されており,早期治療による心病変の改善も報告されている.[磯部光章]
Fabry病(代謝性ポリニューロパチー)
伴性劣性遺伝するα-ガラクトシダーゼA欠損症であり,セラミドトリヘキソシダーゼが血管内皮細胞・平滑筋細胞・汗腺・食細胞・腎に蓄積するため,脳血管障害・心筋症・無汗症・腎不全などが生じる.末梢神経系では神経細胞(脊髄後根神経節,交感神経節,副交感神経節)に著しい蓄積がみられ,神経細胞の脱落があり,典型的には四肢の疼痛発作を学童期から訴えはじめ,痛みで歩けないこともある.自律神経症状として反復性下痢を示すことがある.皮膚症状として臍や陰部に紅斑や斑点状丘疹を認め,被角血管腫をFabryが最初に報告した.腎不全に対しては腎移植するが,蓄積脂質に対して効果はなく,予後は不良であった.最近注目されている治療法にアガルシダーゼを用いた酵素補充療法がある.[芳川浩男]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報