日本大百科全書(ニッポニカ) 「HAND」の意味・わかりやすい解説
HAND
はんど
HIV感染者に生じる、注意力や記憶力が低下するなど比較的軽い症状を示す認知障害の総称。HIV関連神経認知障害(HIV-Associated Neurocognitive Disorders)の略称である。HIVはヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)をさす。HIV感染症関連の認知障害としてはHIV脳症が知られるが、多剤併用療法(cART:combination Antiretroviral Therapy)など治療法の飛躍的な進歩により重症化することは少なくなった。これにかわるようにして増加したのがHANDである。
HANDは認知障害の重い順に、高度な機能障害を伴うHIV認知障害(HAD:HIV-Associated Dementia)、軽度神経認知障害(MND:Mild Neurocognitive Disorder)、無症候性神経認知(神経心理学的)障害(ANI:Asymptomatic Neurocognitive Impairment)などに分けられる。ANIは日常生活に支障をきたさない程度の障害であるが、MNDは支援がなければ生活に支障をきたす程度の障害を伴い、HADはさらに支援が必要となる障害を伴う。なお、アメリカ精神医学会のDSM-5(精神障害の診断と統計の手引き第5版)には、「HIV感染による認知症または軽度認知障害」(Major or Mild Neurocognitive Disorder Due to HIV Infection)という診断名が記載されている。
[編集部]