III-V族化合物半導体(読み)さんごぞくかごうぶつはんどうたい(その他表記)III-Vcompound semiconductor

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

III-V族化合物半導体
さんごぞくかごうぶつはんどうたい
III-Vcompound semiconductor

周期表の 13族に属する元素であるホウ素B,アルミニウム Al,ガリウム Ga,インジウム Inと 15族に属する元素である窒素N,リンP,ヒ素 As,アンチモン Sbによる化合物は半導体となるものが多い。これらの元素は 1990年改訂以前の周期表では,それぞれ III族,V族であったので,現在も用いられている。なかでも,Al,Ga,InとP,As,Sbによる化合物は,その結晶構造が閃亜鉛鉱型をもつ半導体で,応用上有用なものである。 13族と 15族の結合ではイオン性の結合を含む。このため,ケイ素 (シリコン) Siの両隣の元素より成る AlPの禁制帯幅および,ゲルマニウム Geの両隣の元素より成る GaAsの禁制帯幅はそれぞれ Siと Geの禁制帯幅より広い。これらの族化合物のうち,一般に 15族元素の蒸気圧が高いため,この種の化合物をつくるには 15族元素の蒸気を加圧しながら成長させることがある。大きい結晶は引上げ法,薄い成長層は液相または気相エピタキシャル成長法がよく用いられる。実際の結晶では,13族と 15族の原子数比が完全に 1:1 (これを化学量論的組成という) であることはまれで,成長条件によって,どちらかの原子の過不足がある。このような化学量論的組成からのずれは不純物として働くが,その効果は複雑でまだ十分解明されていない。通常,ドナー不純物としては 16族の元素を,アクセプタ不純物としては 12族の元素を用いる。 14族元素のケイ素は作製条件によってドナーにもアクセプタにもなり,これを利用することもある。ケイ素やゲルマニウムに比べて電子移動度が高く,直接遷移型のエネルギー帯構造をもち,電子遷移効果を示すことなどから,ホール素子,マイクロ波電界効果トランジスタ,発光ダイオード半導体レーザー,遷移電子効果ダイオードなどの材料として用いられる。2種以上の半導体を混ぜた結晶 (混晶) として,GaAsと GaP,GaAsと AlAs,GaAsと InAsなどの三元混晶や,InAs,GaAs,GaP,InPの四元混晶などでは,禁制帯幅や格子定数を変えることができるため注目を集めている。

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