電気を流すと光る半導体。プラスとマイナスの性質をもった半導体をつないで電気を流すと、プラスの粒子のような性質を持つ「正孔」と、マイナスの電子がつなぎ目で結合し、そのエネルギーが光になって放出される。電球に比べ、小型化が可能で消費電力が少なく、長寿命なのが利点。低発熱や応答速度が速いなどの特長もある。1960年代に開発が始まり、90年代に
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半導体のpn接合に電流を流して光を放出させるようにしたダイオード。英語の頭文字を並べてLEDともよぶ。半導体ダイオードのpn接合に電流を流すと、n形半導体の電子がp形半導体域に、p形半導体の正孔がn形半導体域に拡散する。これらの電子と正孔はそれぞれの領域にある正孔と電子と再結合するが、その際、半導体の禁制帯幅に応じたエネルギーに対応する波長の光を放出する。この現象は注入型エレクトロルミネセンスとよばれるが、1907年にイギリスのラウンドH.J.Roundにより、炭化ケイ素に針を立てて電流を流すと発光する現象として観察された。ついで1922年にソ連のローセフO.B.Лосев/O.V.Losevにより再発見され、種々の材料について多くの研究がなされた。今日の形の化合物半導体を用いた発光ダイオードは、アメリカRCA社でのローブナーE.E.Loebnerによる1957年からの開発により始められた。化合物半導体を用いると、材料の組み合わせによって発光効率のよいヘテロ(異種金属接合)構造によるpn接合をつくることが容易で、短い任意の光波長の発光に適した禁制帯幅の広い半導体結晶を人工的につくることもできる。
発光ダイオードは通信用に赤外光、表示用に赤、橙(だいだい)、緑、青の各種の可視光のものが開発されている。赤外用には光波長0.88マイクロメートルのヒ化ガリウム(GaAs)を始め、最大1.8マイクロメートルをカバーできるGaIn(インジウム)As、GaInAsP(リン)などの混晶があり、このほかSb(アンチモン)とのⅢ‐Ⅴ族の組み合わせによる化合物半導体によって種々な波長帯のものが開発されている。可視光用では赤色用にGaPに発光効率を増すために発光中心としてZn(亜鉛)‐O(酸素)ペアを加えたもの、橙、黄色用にはGaAsPにN(窒素)を加えたもの、緑色用にはGaP、青色用にはGaNのほかⅡ‐Ⅵ族のZnS(硫黄)、ZnSe(セレン)などが用いられている。なお、技術的に開発がきわめて困難とされていた青色発光ダイオードは、1993年世界に先がけ日亜化学工業(徳島県阿南(あなん)市)の中村修二(現カリフォルニア大学教授)が開発に成功、実用化したものである。
さらに、高輝度用としてダブルヘテロ接合のほか超格子構造により、インジウム窒化ガリウム(InGaN)、インジウムリン化ガリウム(InGaP)、インジウムリン化ガリウム・アルミ(InGaAlP)などが青色・緑色、黄色、赤色などの発光用に開発されている。発光ダイオードは、赤、緑、青とも数カンデラと明るく、発光効率は白熱灯の数倍以上で、寿命も長いので、屋外用大画面ディスプレー、信号機、自動車用ランプなどへと用途を広げている。
[岩田倫典]
『西澤潤一著『オプトエレクトロニクス』(1977・共立出版)』▽『松本正一編著『電子ディスプレイ』(1995・オーム社)』▽『赤松勇編著『青色発光デバイスの魅力』(1997・工業調査会)』▽『西澤潤一・中村修二著『赤の発見 青の発見』(2001・白日社)』
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p型とn型半導体の接合部に電圧をかけると正孔と電子が結合して発光することがある.これを利用した半導体素子を発光ダイオードという.p-n接合に順方向電圧を加えると,接合部の電位障壁が低くなるので,接合部を越えてn領域の電子はp領域へ,p領域の正孔はn領域に注入される.注入された電子および正孔は,注入された領域では熱平衡状態時よりも多くなっているために,それぞれ正孔および電子と再結合を起こして熱平衡状態に戻ろうとする.このとき,再結合によって放出されたエネルギーは,一部は結晶の格子振動や電子に与えられ,一部は光となって放出される.この発光を利用する素子が発光ダイオードであり,発光機構がタングステン電球などと異なり,電気エネルギーを直接,光に変換する特徴がある.この再結合発光の際に,フォノンの吸収または放出を伴う間接遷移と,伴わない直接遷移とがあるが,これは結晶固有のもので,遷移確率の大きい直接遷移型のエネルギー構造をもつものが発光ダイオードとして有望である.これにはGaAs,GaSb,InAs,InSb,CdTeなどがある.しかし,間接遷移であるGaPではバンド間遷移を使わずに,NやZn-Oペアなどの不純物への束縛エキシトンを利用して,高効率の可視領域での発光ダイオードが得られる.また,GaAsやAlAsなどの混晶を用いたものでは発光波長のピークを適当にかえられる.光源として豆電球と比較すると,小型,機械的に堅ろう,消費電力がきわめて少ない,応答速度がきわめて速いなどの特徴がある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
LEDともいう。半導体中の電子と正孔対の再結合によって光を放出する固体発光素子。p-n接合の順方向に電流を加え,p側に電子,n側に正孔を少数キャリアとして注入し,その再結合によって放出されるエネルギーを利用する。小型で堅牢,低電圧,低電流で駆動でき,高輝度で応答性に優れているため,文字や数字あるいは公衆電話電源表示などの表示装置,低速やアナログ光通信用光源,カメラ自動機構や煙感知器などの各種センサー用光源あるいはフォトカプラーとして広く利用されている。表示用のものは,可視光で,しかも視感度の高い波長での発光が要求され,光通信用は伝送媒体の損失の少ない波長での発光が要求される。現在,赤外域から青色まで種々の波長で発光するものが作られている。発光ダイオードの材料としては,ガリウムヒ素GaAs,ガリウムリンGaP,ガリウムヒ素リンGaAsP,ガリウムアルミニウムヒ素GaAlAsが多く利用される。GaAs,GaAlAsは赤外域,赤で発光し,発光効率と応答時間のバランスがよいので光通信用光源,センサー用光源あるいはフォトカプラーに,GaPは赤と緑,GaAsPは赤,黄,橙で発光し,表示用に用いられている。青色用にはGaN,SiCなどが開発されており,今後いっそうの高輝度化が期待されている。
執筆者:島田 禎晋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ASCII.jpデジタル用語辞典ASCII.jpデジタル用語辞典について 情報
…光情報の表示方式からディスプレーデバイスを大別すると,自発光型(能動型)と光制御型(受動型)とに分かれる。自発光型の例としては,陰極線管の大部分,プラズマディスプレー,発光ダイオード,エレクトロルミネセンス素子など,光制御型としては,ライトバルブ用陰極線管,液晶,エレクトロクロミック素子などがある。また位置情報の表示には,ごく少数の文字・数字表示のものでは各文字を構成する素子それぞれに結線して制御信号を全並列に印加するが,ある程度以上文字数が多いときには,それらを順次切り替えて時分割に制御信号を加える。…
※「発光ダイオード」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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