vapor pressure
液相・固相と平衡にある気相の圧力。地学的現象では,マグマの結晶作用や噴火現象・変成反応に対する影響が大きく,主にH2OとCO2ガスの分圧が問題となる。変成作用,特に低温の変成作用では,揮発成分が気相でない場合もありうるが,通常,便宜的に蒸気圧と呼んでいる。G.W.Morey(1922)はマグマの結晶作用が進むと急激に水蒸気圧が増大することに注目し,噴火に至る過程を説明し,R.Goranson(1931, 38)はいろいろの温度・外圧のもとでの花崗質マグマ中の水の溶解度を研究。G.C.Kennedy(1955)はマグマだまり中のH2Oの量と分布を考察し,マグマの分化作用・火山活動の様式への影響を説明した。近年,いろいろな水蒸気圧下での珪酸塩の相平衡や酸素分圧の実験的研究が進み,マグマの結晶作用の温度や分化経路に対する影響や噴火機構が明らかにされつつある。特に玄武岩質マグマの分化経路がFeの著しい濃集を伴う場合と,そうでない場合を酸素分圧の違いで説明しようとする試みが盛ん(E.F.Osborn, 1962など)。累進変成作用における変成反応は含水珪酸塩や炭酸塩の脱水・脱炭酸ガス反応であるから,これらの分圧の高低は変成反応の起こる温度を上げたり下げたりする。したがって,変成作用の条件を考察する場合,固相圧と流体相圧を区別しなければならない。
H2Oを含む混合流体相があり,混合熱が0であるときH2O分圧pwは,pw=p・xwで定義される(p:混合流体の全圧,xw:H2Oのモル分率)。このとき,aA
bB+νH2O……(1)の脱水反応に対する平衡条件は,ν(lnfw+lnxw)=-(ΔGs+ΔGw°)/RT……(2)(fw:与えられた条件での純粋のH2Oに対するフガシティー,ΔGs:反応(1)の固相間の自由エネルギーの差,ΔGw°:1気圧下での純粋のH2Oの有する自由エネルギー)。(2)式から,(∂T/∂xw)p=νRT/xw・Δs……(3),(∂P/∂xw)T=-νRT/xw・Δv……(4)が得られる(Δs:与えられた条件での純粋のH2Oを含む反応(1)の反応エントロピー,Δv:容積変化)。(3),(4)の関係は反応(1)の反応曲線がP-T図上でpwが小さくなるほど低温・高圧側に移動することを意味する。CO2分圧についてもまったく同じように扱うことができる。
執筆者:小林 武彦・松本 隆
出典 平凡社「最新 地学事典」最新 地学事典について 情報
気化した固体、液体の圧力のこと。一定の温度においては、固体や液体から気化して生じる蒸気圧はある上限までしか到達しない。この上限を飽和蒸気圧とよぶ。飽和蒸気圧は、物質の種類(相)と温度によって定まる。同一温度では沸点の低い物質のほうが大きいことになる。同一物質では温度が高いほど大きい。
ときには、飽和蒸気圧あるいは飽和水蒸気圧のことを単に蒸気圧といっている場合もあるから注意を要する(むしろこのほうが多いかもしれない)。
[山崎 昶]
液体の飽和蒸気圧が大気圧と等しくなると、液体の内部から気体の発生が始まる(沸騰)。したがって、高山の頂上などのように大気圧の低い所では、地上よりも低温で沸騰が始まる。これを逆用して、ポンプなどで排気を行って減圧すると、ずっと低温で沸騰させることができる。水流ポンプ(アスピレーター)などを用いて実験室でよく行われるが、これは正確には減圧蒸留であるけれども、よく真空蒸留という。
[山崎 昶]
気象用語で蒸気圧といえば、大気中の水蒸気の分圧をさす。水蒸気張力(略して水張)ともいう。一般に空気中には水蒸気が含まれており、気圧は湿潤空気の圧力で、乾燥空気の圧力と水蒸気の圧力の和である。蒸気圧も気圧と同様にヘクトパスカルの単位で表す。蒸気圧は、通常の気象観測では、通風乾湿計による測定か、または露点湿度の測定の結果から求められる。蒸気圧は存在する水蒸気量によって決まるので、ある容積の空気中に含まれる水蒸気量を蒸気圧で表示することもある。水蒸気は空気とよく混合するので、水蒸気の温度のかわりに気温を用いて差し支えない。蒸気圧(e)は、厳密には、水蒸気圧のモル率(Nv)と湿潤空気の圧力(p)の積として次式で定義される。

ここに、rは混合比とよばれるもので、乾燥空気の質量に対する水蒸気の質量の比として表される。また、εは乾燥空気の分子量に対する水蒸気の分子量の比である。さらに、蒸気圧(e)、湿度(T)と容積(V)との間には次の関係が成立する。

ただし、Rは普遍気体定数、R′は乾燥空気の比気体定数、Mvは水蒸気の分子量である。大気中の水蒸気は高さとともに減少し、単位断面積の気柱に含まれる水蒸気量の大部分は対流圏の中にあり、その大半は高さ3キロメートルの下層部分に含まれている。
[股野宏志]
蒸気張力ともいう。広くは蒸気(気体)の圧力のことであるが,ふつうは一定の温度において液相または固相と平衡にある気相の圧力,すなわち飽和蒸気圧saturated vapor pressureをいう。固相と平衡にある蒸気の場合は昇華圧sublimation pressureと呼ぶこともある。(飽和)蒸気圧は一般に温度の上昇とともに増加し,その関数関係はクラウジウス=クラペイロンの式で与えられる。
執筆者:小野 嘉之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
普通,液体あるいは固体の飽和蒸気圧をさす.飽和でない一般の蒸気の圧力は蒸気圧とはいわず蒸気の圧力という.一般に蒸気圧は温度とともに指数関数的に増加し,その定量的関係はクラペイロン-クラウジウスの式で与えられる.液体の最高の蒸気圧は臨界圧であり,臨界温度以上の温度では液体は存在しえないから,蒸気圧も存在しえない.20 ℃ における水の蒸気圧は2.336 kPa.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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[物理的性質]
液体の水をその体積よりも大きな容器に密閉して放置しておくと,水は表面から蒸発して水蒸気になるが,蒸発する水の量には限度があり,水蒸気の圧力がある一定の値に達すると蒸発は見かけ上とまり,水と水蒸気との間に平衡状態が成立する。このときの水蒸気を飽和水蒸気といい,この限界圧力を飽和水蒸気圧または単に蒸気圧という。飽和水蒸気圧は温度によって異なり,温度の上昇とともに急激に大きくなるが,共存する水と水蒸気の量には無関係である。…
※「蒸気圧」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 春の季節がもうすぐそこまで来ていること。《 季語・冬 》 〔俳諧・俳諧四季部類(1780)〕[初出の実例]「盆栽の橙黄なり春隣〈守水老〉」(出典:春夏秋冬‐冬(1903)〈河東碧梧桐・高...