蒸気圧(読み)ジョウキアツ(英語表記)vapor pressure

翻訳|vapor pressure

デジタル大辞泉 「蒸気圧」の意味・読み・例文・類語

じょうき‐あつ【蒸気圧】

一定温度液体または固体平衡状態にある蒸気圧力。ふつうは飽和蒸気圧をさす。

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精選版 日本国語大辞典 「蒸気圧」の意味・読み・例文・類語

じょうき‐あつ【蒸気圧】

  1. 〘 名詞 〙 ある一定の温度において、固体または液体と平衡状態にある蒸気の圧力。蒸気張力。〔稿本化学語彙(1900)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「蒸気圧」の意味・わかりやすい解説

蒸気圧
じょうきあつ
vapor pressure

気化した固体、液体の圧力のこと。一定の温度においては、固体や液体から気化して生じる蒸気圧はある上限までしか到達しない。この上限を飽和蒸気圧とよぶ。飽和蒸気圧は、物質の種類(相)と温度によって定まる。同一温度では沸点の低い物質のほうが大きいことになる。同一物質では温度が高いほど大きい。

 ときには、飽和蒸気圧あるいは飽和水蒸気圧のことを単に蒸気圧といっている場合もあるから注意を要する(むしろこのほうが多いかもしれない)。

[山崎 昶]

飽和蒸気圧

液体の飽和蒸気圧が大気圧と等しくなると、液体の内部から気体の発生が始まる(沸騰)。したがって、高山頂上などのように大気圧の低い所では、地上よりも低温で沸騰が始まる。これを逆用して、ポンプなどで排気を行って減圧すると、ずっと低温で沸騰させることができる。水流ポンプアスピレーター)などを用いて実験室でよく行われるが、これは正確には減圧蒸留であるけれども、よく真空蒸留という。

[山崎 昶]

気象

気象用語で蒸気圧といえば、大気中の水蒸気の分圧をさす。水蒸気張力(略して水張)ともいう。一般に空気中には水蒸気が含まれており、気圧は湿潤空気の圧力で、乾燥空気の圧力と水蒸気の圧力の和である。蒸気圧も気圧と同様にヘクトパスカルの単位で表す。蒸気圧は、通常の気象観測では、通風乾湿計による測定か、または露点湿度の測定の結果から求められる。蒸気圧は存在する水蒸気量によって決まるので、ある容積の空気中に含まれる水蒸気量を蒸気圧で表示することもある。水蒸気は空気とよく混合するので、水蒸気の温度のかわりに気温を用いて差し支えない。蒸気圧(e)は、厳密には、水蒸気圧のモル率(Nv)と湿潤空気の圧力(p)の積として次式で定義される。


ここに、rは混合比とよばれるもので、乾燥空気の質量に対する水蒸気の質量の比として表される。また、εは乾燥空気の分子量に対する水蒸気の分子量の比である。さらに、蒸気圧(e)、湿度(T)と容積(V)との間には次の関係が成立する。


ただし、Rは普遍気体定数、R′は乾燥空気の比気体定数、Mvは水蒸気の分子量である。大気中の水蒸気は高さとともに減少し、単位断面積の気柱に含まれる水蒸気量の大部分は対流圏の中にあり、その大半は高さ3キロメートルの下層部分に含まれている。

[股野宏志]

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改訂新版 世界大百科事典 「蒸気圧」の意味・わかりやすい解説

蒸気圧 (じょうきあつ)
vapor pressure

蒸気張力ともいう。広くは蒸気(気体)の圧力のことであるが,ふつうは一定の温度において液相または固相と平衡にある気相の圧力,すなわち飽和蒸気圧saturated vapor pressureをいう。固相と平衡にある蒸気の場合は昇華圧sublimation pressureと呼ぶこともある。(飽和)蒸気圧は一般に温度の上昇とともに増加し,その関数関係はクラウジウス=クラペイロンの式で与えられる。
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化学辞典 第2版 「蒸気圧」の解説

蒸気圧
ジョウキアツ
vapor pressure

普通,液体あるいは固体の飽和蒸気圧をさす.飽和でない一般の蒸気の圧力は蒸気圧とはいわず蒸気の圧力という.一般に蒸気圧は温度とともに指数関数的に増加し,その定量的関係はクラペイロン-クラウジウスの式で与えられる.液体の最高の蒸気圧は臨界圧であり,臨界温度以上の温度では液体は存在しえないから,蒸気圧も存在しえない.20 ℃ における水の蒸気圧は2.336 kPa.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「蒸気圧」の意味・わかりやすい解説

蒸気圧
じょうきあつ
vapour pressure

蒸気張力ともいい,蒸気が示す圧力のことをさす。液体または固体と平衡にある気体の蒸気圧を飽和蒸気圧といい,これを単に蒸気圧ということも多い。物質の飽和蒸気圧は温度によって定まる固有の値をもち,一般に温度とともに増大し,その関係はクラペイロン=クラウジウスの式で表わされる。固体が気化した蒸気の蒸気圧を昇華圧ともいう。

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栄養・生化学辞典 「蒸気圧」の解説

蒸気圧

 →飽和蒸気圧

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世界大百科事典(旧版)内の蒸気圧の言及

【水蒸気】より


[物理的性質]
 液体の水をその体積よりも大きな容器に密閉して放置しておくと,水は表面から蒸発して水蒸気になるが,蒸発する水の量には限度があり,水蒸気の圧力がある一定の値に達すると蒸発は見かけ上とまり,水と水蒸気との間に平衡状態が成立する。このときの水蒸気を飽和水蒸気といい,この限界圧力を飽和水蒸気圧または単に蒸気圧という。飽和水蒸気圧は温度によって異なり,温度の上昇とともに急激に大きくなるが,共存する水と水蒸気の量には無関係である。…

※「蒸気圧」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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