トリグリセリド

四訂版 病院で受ける検査がわかる本 「トリグリセリド」の解説

トリグリセリド

基準値

30~150mg/dℓ(酵素法)

トリグリセリドとは

 コレステロールと同じように脂質一種で、いわゆる中性脂肪のこと。食事に含まれる脂肪分が腸管から吸収されるほか、脂肪や糖分を材料として肝臓でもつくられる。


トリグリセリドをとり過ぎると肥満脂肪肝などに

血液中の脂質の量を調べる検査で、動脈硬化性の病気を調べるために重要です。高値が続くと動脈硬化に、また肥満や脂肪肝になると高値になります。

高値が続くと動脈硬化に

 トリグリセリド(中性脂肪)も、LDL・HDLコレステロールと同様、動脈硬化性の病気を調べるうえで重要な検査です。

 トリグリセリドは皮下や肝臓などに貯蔵されて、必要に応じて血液中に送り出され、生命活動を行ううえで必要なエネルギーになりますが、コレステロールの代謝とも相互に関係し、高値になるとLDLコレステロールを上昇させ、 動脈硬化の原因になります。

とり過ぎると肥満、脂肪肝などに

 トリグリセリドは食物にたくさん含まれており、食物の種類やカロリー摂取量によっても変動します。

 一般に、脂肪や炭水化物・糖分、アルコールなどをとり過ぎると皮下や肝臓などに沈着して高値になり、肥満や脂肪肝などになります。

 とくにアルコールは、1gあたり7kcaℓという高カロリーのため、また高栄養のつまみを食べることが多いため、長期にわたっての飲み過ぎは脂質異常症(→参照)の大きな原因になります。

検査前12時間以上は絶食

 検査は、酵素を用いた試薬によって測定します。トリグリセリドは食後に上昇し、1~2時間後に最大値になったのち徐々に減少し、食事前の濃度に戻るのに10~14時間かかります。アルコール摂取でも8時間後に最大値になって約30%も増加、さらに脂肪と一緒にとると12時間後でも高値が続きます。

 したがって、トリグリセリドの正確な値を知るためには、検査前12時間以上は絶食、禁酒します。

アルコールや食事が原因の高値は経過観察

 トリグリセリドの基準値は30~150mg/dℓで、上限値は病態識別値(動脈硬化性疾患)です。トリグリセリドが150mg/dℓ以上の場合を高トリグリセリド血症といいます。基準値を超えていたら、2週間後くらいに再検査します。

 トリグリセリドは、そのほとんどがアルコールや食事の影響、糖尿病甲状腺機能低下症などの病気によって高値になります。アルコールや食事で高値の場合は、300mg/dℓくらいまでは運動や食事などライフスタイルの改善が必要で、半年に1回ほどのチェックで経過を観察します。

 トリグリセリドが400mg/dℓ以上で、HDLコレステロールが40mg/dℓ以下の場合は、薬剤による治療を行うのが一般的です。

疑われるおもな病気などは

◆高値→家族性脂質異常症(Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ型)、糖尿病、ネフローゼ症候群、甲状腺機能低下症、脂肪肝、腎不全など

◆低値→栄養不良、吸収不良症候群、慢性肝機能障害(肝硬変、肝臓がん)など

医師が使う一般用語
「トリグリ」=トリグリセリドの略

出典 法研「四訂版 病院で受ける検査がわかる本」四訂版 病院で受ける検査がわかる本について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トリグリセリド」の意味・わかりやすい解説

トリグリセリド
triglyceride

中性脂肪 neutral fatともいう。1分子のグリセリンが脂肪酸3分子と結合してエステル化されたもので,不飽和脂肪酸が多いと融点が低く,液状になる。脂肪酸鎖の炭素数は通常 14個以上。不飽和トリグリセリドは植物性のものに多く,空気中の酸素を取込むと過酸化物になったり,乾いて固まる (乾性油) 。トリグリセリドは皮下脂肪の本体で,リポプロテインリパーゼによって絶えず脂肪組織に取込まれたり分解されたりして熱源として利用されている。 1gの燃焼熱は 9450calであるが,栄養生理学的には 9000calとして計算される。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

化学辞典 第2版 「トリグリセリド」の解説

トリグリセリド
トリグリセリド
triglyceride

[別用語参照]グリセリド

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

栄養・生化学辞典 「トリグリセリド」の解説

トリグリセリド

 →トリアシルグリセロール

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のトリグリセリドの言及

【グリセリド】より

…グリセライド,アシルグリセロールともいう。グリセリンの3個の水酸基すべてが脂肪酸とエステルを形成したトリグリセリドは動植物脂肪の主成分をなす。グリセリンの2個の水酸基がエステル化したジグリセリド,1個の水酸基がエステル化したモノグリセリドも天然に存在するが,トリグリセリドに比べて存在比は小さい。…

【脂肪】より

…一般に水には溶けないが,エーテルやクロロホルムなどの有機溶剤には溶ける。その大半は,グリセロールの三つの水酸基すべてに脂肪酸の結合したトリアシルグリセロール(トリグリセリド)であり,少量のモノグリセリド,ジグリセリドが含まれる。脂肪酸としてはステアリン酸,パルミチン酸などの飽和脂肪酸,オレイン酸,リノール酸などの不飽和脂肪酸が多い。…

【消化】より

…この過程を細胞内消化という。
[脂質の消化]
 食物中の脂肪の大部分は中性脂肪(トリグリセリド)であるが,これは胆汁酸の存在下,腸管運動のかくはん混和作用により,乳化された状態で膵リパーゼの加水分解作用をうけ,モノグリセリドと脂肪酸に加水分解される。脂肪の加水分解を触媒するリパーゼは,脂肪と水の界面で作用するので脂肪が乳化され,反応表面積が増加していると加水分解は著しく促進される。…

【中性脂肪】より

…したがって,生体膜などの構成成分となる複合脂質に比べて,脂質のなかでは変動しやすい性質をもっている。 グリセリドにはモノグリセリド,ジグリセリド,トリグリセリドの3種があるが,グリセリンの3個の水酸基がすべて脂肪酸でエステル化されたトリグリセリド(トリアシルグリセロール)が,動植物には中性脂肪として圧倒的に多く含まれているので,このトリグリセリドを例にとって,中性脂肪の代謝をより詳しくたどってみたい。 トリグリセリドの脂肪酸としてはC16(パルミチン酸)とC18(オレイン酸,リノール酸,リノレン酸)が最も一般的である。…

※「トリグリセリド」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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