翻訳|peroxide
負2価のO2基を有する酸化物の総称。過酸化水素の誘導体とみなすことができる。アルカリ金属およびアルカリ土類金属の化合物がよく知られており、たとえばLi2O2(無色)、Na2O2(黄色)、K2O2(橙(だいだい)色)、MgO2(無色)、CaO2(無色)、SrO2(無色)、BaO2・8H2O(無色)などがある。いずれも固体であるが、(NH4)2O2・H2O2では無色不安定な液体である。そのほかZnO2(黄色)やTiO3・nH2O(Ti(OOH)(OH)3)(黄色)、CrO(O2)2(CrO5)(青色)なども過酸化物である。
金属あるいは金属酸化物を空気または酸素と熱する(たとえば金属ナトリウムを空気中で熱すると過酸化ナトリウムNa2O2が得られる)、あるいは金属塩の水溶液に過酸化水素水を加える(たとえば水酸化バリウムの飽和水溶液に過酸化水素水を加えるとBaO2・8H2Oが沈殿する)などのようにしてつくられる。
前記のような無機過酸化物に対して、有機の過酸化物も存在する。たとえば過酸化ジアルキルR-O-O-R、過酸化アシルRCO-O-O-CORなどがある。
高酸化数の化合物を誤って過酸化物とよんでいる場合があるので、これに対しては注意しなければならない。たとえば過酸化窒素NO2、過酸化鉛PbO2、過酸化塩素ClO2などと誤ってよばれているものはO22-が含まれていないので過酸化物ではなく、それぞれ二酸化窒素、酸化鉛(Ⅳ)、二酸化塩素などとよぶべきものである。
[中原勝儼]
『W・ビュヒナー他著、佐佐木行美・森山広思訳『工業無機化学』(1989・東京化学同人)』▽『日本化学会編『有機合成3 アルデヒド・ケトン・キノン』第4版(1991・丸善)』▽『ジョージ・D・クレイトン、フローレンス・E・クレイトン編、内藤裕史・横手規子監訳『化学物質毒性ハンドブック』全6冊(1999~2000・丸善)』
O22⁻イオンを有する無機化合物の総称。金属あるいは金属酸化物を空気または酸素と加熱したり,溶媒和電子が存在しているような金属ナトリウムなどの液体アンモニア溶液に酸素ガスを通じると,それぞれの金属の過酸化物が得られる。金属塩の水溶液に過酸化水素H2O2を加えても生成する。H2O2をはじめ,過酸化リチウムLi2O2,過酸化ナトリウムNa2O2などのアルカリ金属塩(MI2O2型),過酸化バリウムBaO2などのアルカリ土類金属塩やいくつかの2価遷移金属(Zn,Cd,Hgなど)の塩(MIIO2型),ランタニド(Ⅲ)やウラン(Ⅳ)などの過酸化物が知られている。PbIVO2,NO2などはそれぞれ過酸化鉛,過酸化窒素などと呼ばれることもあるが,これらはO2⁻イオンを有する化合物であるので過酸化物ではなく,正しくは酸化鉛(Ⅳ),二酸化窒素などと呼ぶべきである。過酸化物を酸に溶解すると過酸化水素を生ずる。過酸化物は強力な酸化剤であるが,H2O2などは過マンガン酸などのようにさらに強い酸化剤と反応するときにはむしろ還元剤として作用する。なお,ペルオキソクロム酸塩MI3CrO8(4個のO22⁻がCr(V)に配位した化合物),ペルオキソ炭酸塩MI2CO4(一般にMI2CO3・aH2O2・bH2Oの組成で与えられる),ペルオキソチタン酸塩H4TiO5(実はTiO3・2H2O)など多くの金属のペルオキソ酸塩も過酸化物と呼ばれることがある。また,過酸化ジアルキルR-O-O-R′や過酸化アシルRCO-O-O-COR′などのように,-O-O-結合を有する有機化合物も過酸化物と呼ばれる。
執筆者:大瀧 仁志
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
過酸化物イオン O22- を含む化合物をいう.アルカリ金属の化合物として,Li2O2(白),Na2O2(淡黄),K2O2(橙),Rb2O2(暗褐色),Cs2O2(黄),アルカリ土類金属の化合物として,MgO2(白),CaO2(白),SrO2(白),BaO2(白),そのほかランタノイド,水素の化合物が知られている.金属あるいは金属酸化物を空気または酸素中で熱するか,金属の液体アンモニア溶液に酸素を通じるか,または金属塩水溶液にH2O2を加えるかして得られる.金属原子の大きさおよび電気的陽性の程度によって安定度が異なり,
Ca < Sr < Ba
の順に得られやすくなる.アルカリ金属,Ca,Sr,Baなどの化合物はイオン性過酸化物,Ag,Zn,Cd,Hgなどは本質的に共有性の過酸化物,Li,Mg,ランタノイド,ウラン(Ⅵ)などは中間の性質をもった過酸化物である.イオン性の過酸化物は水あるいは希酸でH2O2を生じ,すべて強力な酸化剤である.アルカリ過酸化物はCO2とも反応する.過マンガン酸塩のような強酸化剤に対しては還元剤としてはたらく.過酸化物イオン O22- は配位子としてもはたらき,多くのペルオキソ錯体が知られている.また,非常に多数の有機過酸化物も知られている.酸化剤,漂白剤として用いられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新