平安中期の歌学書。能因著。類書のなかでは比較的初期のもので、同じころ『四条大納言(だいなごん)歌枕』(藤原公任(きんとう)著、散逸)もあった。内容は、和歌用語の異名や枕詞(まくらことば)について記した部分、国々の名所(歌枕)を列挙した部分、および正月~12月の各月に詠むべき和歌の素材を記した部分からなっている。歌人が和歌をつくったり、学んだりする際、座右に備えて参看されたものと考えられ、後世の歌学書にも影響を与えている。能因は清少納言と血縁関係にあり、『枕草子(まくらのそうし)』などからの影響も考えられる。
[川村晃生]
『佐佐木信綱編『日本歌学大系1』(1963・風間書房)』
…古典和歌の世界では,和歌に詠むにふさわしい由緒ある一群の地名があり,恣意(しい)的に勝手な地名を詠みこむことは許されなかった。その地名は,《能因歌枕》《五代集歌枕》《八雲御抄》《歌枕名寄》などの歌学書に集成され,いわば登録された形になっている。歌枕という語は,古くは歌に使用すべき言葉一般,あるいはそれらの言葉を集成した書物という広い意味で使われた。…
… またこの時代には和歌の学問がさかんになって,古歌の語が研究されるようになり,多くの歌論書が作られた。その中で,能因法師の《能因歌枕(うたまくら)》1巻,藤原仲実(なかざね)の《綺語(きご)抄》3巻,藤原清輔(きよすけ)の《奥儀(おうぎ)抄》3巻(天治~天養期(1124‐45)ころ成立),顕昭の《袖中(しゆうちゆう)抄》20巻(文治期(1185‐90)ころ成立),藤原範兼(のりかね)の《和歌童蒙(どうもう)抄》10巻(1135‐55(保延1‐久寿2)の間に成立)などの中には,歌語を集めて意味分類をし,それに解釈を加えた部分が含まれている。
[鎌倉・室町時代]
平安時代の辞書の影響を受けながら,多くの辞書が新しく編まれた。…
※「能因歌枕」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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