カンテレタル(読み)かんてれたる(英語表記)Kanteletar

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カンテレタル」の意味・わかりやすい解説

カンテレタル
かんてれたる
Kanteletar

フィンランド民族叙情詩集。全3巻。652詩、2万2329行からなる。1840~41年刊。民族叙事詩カレバラ』とともにフィンランド伝承文芸の双璧(そうへき)をなす。E・ロンルートは1828年から伝承詩を採集し続け、叙事詩を『カレバラ』に、叙情詩類を『カンテレタル』に集大成した。第1巻は婚礼や飼畜ほか村落生活を素材とする叙情詩、第2巻は若い男女の悲愁歓喜を中心とする叙情詩、第3巻はバラード史実・伝説などに由来する物語詩からなる。編者によって類詩との語句の調整がなされているが、伝承詩としての価値は損なわれていない。『カレバラ』と同様に、『カンテレタル』もまた、この国の詩人や作曲家を刺激した。

[高橋静男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カンテレタル」の意味・わかりやすい解説

カンテレタル
Kanteletar

フィン族の伝承歌謡集。 1828年フィンランドの民俗学者 E.リョンロート口承文芸の採集旅行を開始し,以後回を重ねていき,それらの成果のうち叙事詩を中心に『カレワラ』を編纂,その他を項目別にして『カンテレタル』全3巻を編んだ (1840~41) 。婚礼,儀礼,飼畜などに関して共同体で伝承されてきた老幼男女の抒情詩を第1巻に,若い男女の悲愁,歓喜の抒情詩を第2巻に,古代信仰,史実,神話伝説的伝承歌謡類を第3巻に収め,全編 652詩から成る。編纂者による加筆修正が少いので,古代フィン族の真情をうかがうことができる。

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世界大百科事典(旧版)内のカンテレタルの言及

【フィンランド】より

…主要民族としてのフィンランド人はスウェーデンからの移住者と共有する輪舞,哀悼歌,バイオリンなどの伝統をフォークロアとして伝承してきたが,最も貴重で影響力が大きいのは叙事詩《カレワラ》の歌唱である。無伴奏あるいはカンテレkantele(チター属の撥弦楽器)伴奏による歌唱,あるいはカンテレタルと呼ばれるカンテレ伴奏の別の声楽が,後世の音楽創造上のよりどころを提供した。他の伝統楽器としてはヨウヒッコ(カンテレから発達した弓奏の楽器),樺(かば)皮のらっぱ,角笛,柳笛,クラリネットなどがある。…

※「カンテレタル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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