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叙情詩 じょじょうしlyric

翻訳|lyric

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知恵蔵の解説

叙情詩

叙事詩」のページをご覧ください。

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

叙情詩
じょじょうし
lyric

個人の深い内面的な感情を短く主観的に表現した詩をいう。英語の「リリック」という名称は、古来リラlyreという楽器で伴奏されたことに由来している。現在では歌うものから読むものに変質して、叙情詩の内容や表現形態も複雑になったが、いまでもミュージカルなどで歌われるものは、昔どおりの意味で「リリック」とよばれている。ワーズワースは「詩は力強い感情がおのずと外にあふれ出たもの」と定義しているが、これは叙情詩のよい定義であり、島崎藤村(とうそん)も合本詩集の自序でこれを援用している。このような感情の吐露は、個性が尊重されているところでなければ不可能で、ロマン主義の固有の産物である。叙情詩はギリシアのサッフォーやイビコスの時代、イギリスのシェークスピアやダンの時代、それに19世紀のロマン派の時代にもっとも栄えた。
 叙情詩の種類には、狭義の叙情詩から、バラードや、死を悼む哀歌(エレジー)や、荘重な瞑想(めいそう)を扱う頌詩(しょうし)(オード)や、さらに自伝的物語詩や牧歌まで含まれる。これらに共通している点は、主観性と音楽性であろう。
 古典主義の時代には、叙情詩の感情表白の面が抑えられて、ラ・フォンテーヌのような寓意(ぐうい)詩、マーシャルのような警句、ポープのような教訓詩、風刺詩がおもに書かれる。しかしこれらも短い音楽的要素を含んで書かれるものとして、やはり広義の叙情詩に属している。また19世紀のようなロマン派の時代にも、バイロンの『ドン・ジュアン』のようなバーレスク的な詩や、リアやルイス・キャロルのナンセンスやパロディーの詩も、叙情詩の変型として書かれている。20世紀では社会的なオーデンの詩も、「詩論の詩」であるスティーブンズの詩も、カミングズの具象詩に至るまで、叙事詩と劇詩でないものはすべて、広義の叙情詩に入れられている。
 表現の特徴としては、おもに一人称の話者を用い、それは作者自身の場合も多いが、かならずしも作者と同一であるとは限らない。T・S・エリオットの『プルーフロックの恋歌』のように、架空の人物の劇的独白の形を使う場合もしばしばある。
 いままでは原則として韻文を念頭に置いて説明してきたが、19世紀後半に「リズムや韻がなくとも、心の叙情の動きや、夢想の波動に、意識の飛躍に即応するような、柔らかくてしかも剛直な」散文詩が出現して、叙情詩の音楽性をさらに内面化させた。[新倉俊一]

日本

日本の詩歌は本質的に叙情詩である。それは『古事記』に出てくる素朴な古代歌謡においても、すでに造型様式が叙情的であったし、『万葉集』の31文字の歌では個人的主観的詠歎(えいたん)の特徴がはっきりと示されている。やがて王朝貴族の社会になると、詩歌はますます民衆的なエネルギーから遊離していって、洗練された純粋な叙情詩の美学が確立された。それ以来、その特質は、俳句や近代詩に至っても、本質的に変わっていない。これは日本の風土に関係があるかもしれないが、いまひとつ、日本の詩歌の成立に影響を与えたものが、海外の叙情詩論であったことも見逃せない。たとえば『古今和歌集』の紀貫之(きのつらゆき)の有名な序は、中国の六朝(りくちょう)の叙情詩観に基づいており、また近代詩の『詩の原理』を書いた萩原朔太郎(はぎわらさくたろう)の詩観も、ポーの叙情詩観やボードレールの象徴詩観に負うている。[新倉俊一]

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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