悔・口惜(読み)くやしい

精選版 日本国語大辞典 「悔・口惜」の意味・読み・例文・類語

くやし・い【悔・口惜】

〘形口〙 くやし 〘形シク〙 (「悔いる(悔ゆ)」の形容詞化)
自分の行為について後悔する心情にいう。取り返しがつかないことで残念だ。
古事記(712)中・歌謡「わが心しぞ いや愚(をこ)にして 今ぞ久夜斯岐(クヤシキ)
和泉式部日記(11C前)「おろかに過ぎにし方さへくやしうおぼさるるもあながちなり」
勝負に負けたり、相手にはずかしめられたり、外部の状況が期待に反したりして、後悔したり腹立たしく思ったりする気持にいう。しゃくだ。いまいましい。
※評判記・剥野老(1662)吉川六彌「よし川のながれ名にたつおほぬさはひくてになびく心くやしき」
※滑稽本・七偏人(1857‐63)二「ヱヱ悔ししや憎らしし腹立ししと言ながら」
[語誌](1)本来は①のように過去の自己の行為を悔やむ意で和歌にも多く用いられた。
(2)中古から広く用いられるようになった類義語クチヲシは、周囲に期待を裏切られた時に起こる失望感を表わした点においてこれと異なっていたが、やがてクヤシにも同様の意の②が生じ、両語の使い分けは、近世以降、見られなくなる。
(3)同じく類義語と考えられるネタシは、相手が自分より優位にあることをうらやましく思う意味重点があり、自省的な意味をもつクヤシとは、異なっている。
くやし‐が・る
〘他ラ五(四)〙
くやし‐げ
〘形動〙
くやし‐さ
〘名〙

くやし【悔・口惜】

〘形シク〙 ⇒くやしい(悔)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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