政談演説(読み)せいだんえんぜつ

改訂新版 世界大百科事典 「政談演説」の意味・わかりやすい解説

政談演説 (せいだんえんぜつ)

政治思想を普及させる方法として行われた演説。明治10年代初め自由民権運動が起こると,明六社らの知識人グループが行っていた演説は,民権派によって政府批判,民権思想普及・宣伝のための手段として重視され,政談演説会が頻繁に開かれた。政談演説は新聞とならぶ最も重要なコミュニケーション手段であり,1881-82年に全国で大流行した。それにともない政府は取締りを厳しくし,街頭での演説禁止,官吏の演説禁止,警察官の臨監,法に触れた弁士の一定期間演説禁止などの処置をとり,1880年にはこれらをあわせて集会条例を制定して規制した。民権運動の沈滞とともに演説もふるわなくなり,官僚政治確立は,行政手段をとおした民衆意識の制御・培養を主とし,演説による宣伝扇動を第二義的なものにしていった。帝国議会開幕後は政党政治家の間でわずかにその伝統はうけつがれ,あるいは政治家志望の学生の〈雄弁術〉として生きのこることになった。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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