栗焼(読み)クリヤキ

デジタル大辞泉 「栗焼」の意味・読み・例文・類語

くりやき【栗焼】

狂言主人命令で栗を焼いていた太郎冠者が、みな食べてしまい、苦しまぎれにかまどの神に進上したといってごまかす。

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精選版 日本国語大辞典 「栗焼」の意味・読み・例文・類語

くり‐やき【栗焼】

[1] 〘名〙 生栗を焼くこと。また、焼いた栗。〔随筆・続飛鳥川(19C中)〕
[2] 狂言。各流。太郎冠者が栗焼きを命ぜられ、その栗を一つ食べ二つ食べしてついには全部食べ尽くし、言訳に作り謡をうたってごまかすという筋のもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「栗焼」の意味・わかりやすい解説

栗焼
くりやき

狂言の曲名。太郎冠者(かじゃ)狂言。栗をもらった主人は、太郎冠者(シテ)に焼き栗にするよう命じる。台所で栗を焼いた太郎冠者は、あまりにうまそうなので、つい一つ二つと口に入れ、40個全部食べてしまう。太郎冠者は、主人への言い訳に、竈(かまど)の神夫婦に声をかけられ、栗をくれたらこの家をいつまでも富貴に守ってやろうというので二つ進上し、続いてその34人の子供たちへもずらり進上したという。主人はめでたいことだからと鷹揚(おうよう)に許し、それでは残った4個を出せと迫る。窮した太郎冠者が、一つは虫食い、残る三つは昔から栗焼くことばに「逃げ栗、追い栗、灰紛れ」とあるように、すっかりなくなったと答え、叱(しか)られる。

 単純な筋立てだが、栗を焼くしぐさや、我を忘れて全部食べ尽くしてしまう表情など、太郎冠者のひとり芝居に主眼がある。

[油谷光雄]

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