験競べ(読み)ゲンクラベ

デジタル大辞泉 「験競べ」の意味・読み・例文・類語

げん‐くらべ【験競べ】

僧・修験者が左右に分かれて、修行して得た法力をきそい合うこと。
「七月十五日安居あんごの終はる夜―を行ひけるに」〈著聞集・二〉

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改訂新版 世界大百科事典 「験競べ」の意味・わかりやすい解説

験競べ (げんくらべ)

修験者どうしが相手を決めて互いに法術を尽くし,身についた験力の優劣を競うもの。修験者は山岳に入って苦行を重ね,験力を体得するものと考えられたので,いつでも効験を競うことができたが,とくに入峰(にゆうぶ)修行の後にその力を試す験競べが恒例行事として行われた。比叡山,大峰山,熊野山,羽黒山,彦山などのそれが古来有名で,これらは3人ずつあるいは10人ずつと,左右に分かれて,順番に験を競い,全体の勝敗数をもって左右両組の勝負を決めた。その呪法もさまざまあるが,使役神の護法尸童(よりまし)や動物,物体などに憑依(ひようい)させ,動かしたり呪縛(じゆばく)したりしてその結果を見ることがよく行われ,中にはその勝敗を農作や漁獲の豊凶占いと結びつけたものもある。今日,奈良県吉野山蔵王堂の蓮花会の〈蛙飛び〉,山形県羽黒山の松例祭(しようれいさい)の〈兎飛び〉,長野県戸隠山,新潟県妙高山の〈柱松(はしらまつ)〉行事など,各地にその残存儀礼を見ることができる。
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