尸童(読み)よりまし

改訂新版 世界大百科事典 「尸童」の意味・わかりやすい解説

尸童 (よりまし)

依坐とも書く。神霊が童子によりついた場合をいう。神霊が樹木や石などによりついたときには依代(よりしろ)という。神霊ではなく死霊がついた場合は尸者(ものまさ)と呼ばれる。神の意志は清純な童子の口をかりて託宣(たくせん)として示される。菅原道真の霊が近江比良の神主の7歳になる太郎丸についたのもその例である。また長野の諏訪大社では8歳の童子が御衣を身につけることで神がついたと《諏方大明神画詞》にみえている。祭りのときに童子に特別な扮装をさせ,肩車あるいは馬にのせ,祭りに参加させるところが多く,これをヒトツモノと呼んでいる。ヒトツモノは白衣装束山鳥羽根をつけ,御幣をたらした菅笠をかぶり,額におしろいで印をつける。ヒトツモノが馬上などで夢想の状態になると,神がついたとして喜んだ。これは尸童としてのヒトツモノが託宣の機能をもつものと考えられていたことを示すものである。
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百科事典マイペディア 「尸童」の意味・わかりやすい解説

尸童【よりまし】

神霊の依代(よりしろ)としての人間。依坐とも。清浄な生活をする童男童女の場合が多く,祭礼の場合などは着飾って行列中心となる。また,人形を馬に乗せて尸童とすることもある。いずれも神に魅せられた姿とされる。古くは託宣が尸童の口から語られた。また,童児に限らず,成年男女が立てられたこともあった。
→関連項目神託

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「尸童」の意味・わかりやすい解説

尸童
よりまし

憑坐,神子とも書く。依代 (よりしろ) となる人間のこと。子供である場合が多い。神意を伺おうとするときに,男女の幼童の上に神霊を招いて乗移らせ,神の依りますところとして,その託宣を言わせるもの。現在でも各地の祭礼にみられ,神幸の際に行列の中心になり,美しく着飾らせる (→稚児舞 ) 。人形を用い,祈り終ってから川に流すこともある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「尸童」の意味・わかりやすい解説

尸童
よりまし

尸は「かたしろ(形代)」。祖先を祭るとき、神霊のかわりに立って祭りを受ける者。これには児童をもってあてられたので尸童と書く。よりましとよぶのは、神霊がその童子によりつくことからいう。憑人、依坐、託者、因童、依童などの用字例がある。よりましに立てられた童子に対して祈祷(きとう)を行うと、神霊がこれにのりうつって託宣をする。古代の祭りはこの尸童が主体であった。伊勢(いせ)の斎王(いつきのみこ)は大和(やまと)朝廷がたてたよりましであった。

[菟田俊彦]

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