改訂新版 世界大百科事典 「〓楚歳時記」の意味・わかりやすい解説
楚歳時記 (けいそさいじき)
Jīng chǔ suì shí jì
中国,荆楚つまり湖南省,湖北省を中心とする六朝時代の習俗を,正月から12月までの歳時を分かって記した書物。梁の宗懍(そうりん)(498-502)が著し,隋の杜公瞻(とこうせん)が詳しい注を付した1巻本が流布しているが,宗懍の原著は10巻であったらしい。民間の年中行事記としては現存最古のものであって,そのなかには,仏教的行事も,たとえば4月の灌仏会,7月の盂蘭盆会(うらぼんえ),12月の追儺(ついな)などが含まれている。六朝時代には長江(揚子江)以南の開発が進んだので,この地方の地理,風俗,物産に関心が集まった。したがって本書は,東晋の周処の《陽羨風土記》など,当時数多く作られた六朝地誌の一つとみることもできる。
執筆者:勝村 哲也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報