デジタル大辞泉
「著し」の意味・読み・例文・類語
しる・し【▽著し】
[形ク]
1 はっきりしている。際立っている。しろし。
「大伴の遠つ神祖の奥つ城は―・く標立て人の知るべく」〈万・四〇九六〉
2 (多く「…もしるく」の形で)聞いたこと思ったことなどが、はっきり形に現れるさま。
「さればよと思ふも―・くをかしうて」〈枕・二七七〉
しろ・し【▽著し】
[形ク]《「しろ(白)し」と同語源》「しる(著)し」に同じ。
「又―・く院がたへ参るよしを言ひて」〈保元・上〉
いち‐しろ・し【▽著し】
[形ク]「いちじるし」の古い形。
「天霧らし雪も降らぬか―・くこのいつ柴に降らまくを見む」〈万・一六四三〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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しる・し【著】
- 〘 形容詞ク活用 〙
- ① はっきりしている。他からきわだっている。明白である。いちじるしい。
- [初出の実例]「我が夫子が 来べき宵なり ささがねの 蜘蛛のおこなひ こよひ辞流辞(シルシ)も」(出典:日本書紀(720)允恭八年二月・歌謡)
- 「六位の中にも、蔵人は青色しるく見えて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)澪標)
- ② 特に、妊娠の徴候がいちじるしい。
- [初出の実例]「三月になり給へば、いとしるき程にて人々見たてまつりとがむるに」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若紫)
- ③ あらかじめ言った事や思った事の通りの結果がはっきりあらわれる。
- [初出の実例]「さる事はありなんやと思ふもしるく」(出典:落窪物語(10C後)一)
- 「世の乱るる瑞相とか聞けるもしるく」(出典:方丈記(1212))
- ④ 努力したかいが明らかに現われる。
- [初出の実例]「標(し)めはやし いつき祝ひし之留久(シルク) 時にあへるかもや 時にあへるかもや」(出典:催馬楽(7C後‐8C)藤生野)
著しの派生語
しる‐げ- 〘 形容動詞ナリ活用 〙
著しの派生語
しる‐さ- 〘 名詞 〙
いち‐じる・し【著】
- 〘 形容詞ク活用 〙 ( 「いち」は、勢いの盛んな意、「しるし」は、はっきりしている意。古くは「いちしるし」 ) =いちじるしい(著)
- [初出の実例]「皎(イチシル)きこと日月の如し」(出典:日本書紀(720)孝徳即位前(北野本訓))
- 「かやうにききていかにいちしるく思ひあはせ給はん」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
- 「Ichixirǔ(イチシルウ)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
- 「元来(もとより)当社の神徳は、古(いにしへ)より明白(イチジル)く」(出典:人情本・貞操婦女八賢誌(1834‐48頃)初)
著しの語誌
「いちしろし」が古い形とされる。中古以降「いちしるし」の語形が中心となるが、「観智院本名義抄」には「いちしろし」の例もある。中世に入り「いちじるし」の例も見られるようになるが、「日葡辞書」にあるような清音の形が普通の言い方であったか。
いち‐しろ・し【著】
- 〘 形容詞ク活用 〙 ( 「いちじるし(著)」の古形 ) =いちじるしい(著)
- [初出の実例]「隠沼(こもりぬ)の下ゆ恋ひ余り白波の伊知之路久(イチシロク)出でぬ人の知るべく」(出典:万葉集(8C後)一七・三九三五)
- 「皛 アキラカナリ アラハス ウツ イチシロシ」(出典:観智院本名義抄(1241))
しろ・し【著】
- 〘 形容詞ク活用 〙 =しるし(著)
- [初出の実例]「あかつき月夜のさやかなるに、いとしろうさらぼひて」(出典:狭衣物語(1069‐77頃か)二)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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