日本大百科全書(ニッポニカ) 「アイズレー・ブラザーズ」の意味・わかりやすい解説
アイズレー・ブラザーズ
あいずれーぶらざーず
Isley Brothers
アメリカのソウル・ミュージック・グループ。1954年にオハイオ州シンシナティで結成され、ロックン・ロールからソウル・ミュージックの時代を経て長く活躍する。最初はゴスペル・ソングを歌うコーラス・グループであった。結成当時のメンバーは、オーケリー・アイズレーO'Kelly Isley(1937―1986)、バーノン・アイズレーVernon Isley(1938―1954)、ルドルフ・アイズレーRudolph Isley(1939―2023)、ロナルド・アイズレーRonald Isley(1941― )の兄弟4人。バーノンが不慮の事故で亡くなったあと、ロナルドが中心的ボーカリストとして活躍することになった。
アイズレー・ブラザーズにとっての最初の転機は「シャウト」(1959)がヒットしたあと、「ツイスト・アンド・シャウト」(1962)でさらに評価が高まった1960年代前半であった。エネルギッシュなボーカル・スタイルは当時のイギリスの若者にも受け入れられ、なかでもビートルズが「ツイスト・アンド・シャウト」をカバーし、ヒットさせたことで、アイズレー・ブラザーズの名前は欧米のロック・ファンの間でも知られるようになった。
実は「ツイスト・アンド・シャウト」は、アイズレー・ブラザーズにとってもトップ・ノーツというグループのカバー曲であった。これは当時のポピュラー音楽にとって珍しいことではなく、彼らは1970年代に不動の地位を占めるまでジャンルにこだわることなく、カバー曲で多くのヒットを出し続けた。
1966年、オリジナル作品「ジス・オールド・ハート・オブ・マイン」がヒット。その後、当時としては珍しかったミュージシャン自身によるレーベル、T・ネックを設立し、「ラブ・ザ・ワン・ユア・ウィズ」(スティーブン・スティルスStephen Stills(1945― ))、「スピル・ザ・ワイン」(エリック・バードン&ウォー)、「レイ・レディ・レイ」(ボブ・ディラン)、「ザット・レディ」(彼ら自身の旧作品)など、主としてロック作品のカバー曲によりめざましい活躍をする。
この時代のアイズレー・ブラザーズは、新しく弟のアーニー・アイズレーErnie Isley(1952― 、ギター)やマービン・アイズレーMarvin Isley(1953―2010、ギター)、あるいはほかの親戚を迎え入れ、ファンカデリックなどとも共通するロックとファンク・ミュージックを混合させたハードなバンドに姿を変えていった。これは、音をひずませ幻想的な演奏を得意とするジミ・ヘンドリックス系のギタリスト、アーニーの影響が大きい。ちなみにロック・ギターの一大改革者として名を残すヘンドリックスは、1960年代にアイズレー・ブラザーズのバック・バンドに在籍し、彼の初めてのレコーディングもアイズレー兄弟がバックアップしている。
1980年代以降はバンドからの離脱やソロ活動が増え、一時はバンドとしての活動は休止状態にあったが、1990年には再結成された。すでにかつてのロック色は消え、ロナルドのボーカルが、セクシーなソウル・ボーカルの雛型として後輩のミュージシャン、R・ケリーR. Kelly(1967― )たちから尊敬され、高い評価を得ている。
[藤田 正]