ビートルズ(読み)びーとるず(英語表記)The Beatles

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ビートルズ」の意味・わかりやすい解説

ビートルズ
The Beatles

1960年代に活躍したイギリスの音楽グループ。ロック音楽の全盛期(1960年代半ばから 1970年代)への先導役を務めた。
メンバーは,ジョンレノン(1940~80),ポール・マッカートニー(1942~ ),ジョージ・ハリスン(1943~2001),リンゴ・スター(1940~ )の 4人で,全員がリバプールの出身。労働者階級に育ち,ビートルズ以前にさまざまなロックグループで経験を積んだ。
1956年にレノンとマッカートニーがグループを結成,1958年にハリスンが加わった。3人は(1962年に死亡した元メンバーのスチュアート・サトクリフと,のちにリンゴ・スターと入れ替わった元メンバーのピート・ベストとともに),1960年にビートルズと名のり,リバプールや当時のロックミュージックにとって実験的な場所であったドイツのハンブルクのクラブで演奏するようになった。1962年ブライアン・エプスタインのマネージメントで EMI傘下のレーベルとレコーディング契約を結び,リンゴ・スターを新メンバーに迎えた。レノンの印象的なハーモニカから始まるラブソング『ラヴ・ミー・ドゥ』Love Me Do(1962)でレコードデビュー。その後立て続けに発売された『プリーズ・プリーズ・ミー』Please Please Me(1963),『シー・ラヴズ・ユー』She Loves You(1963),『抱きしめたい』I Wanna Hold Your Hand(1963)によって,イギリスで最も人気のあるロックグループとなる。アメリカ合衆国では 1964年前半に『シー・ラヴズ・ユー』『抱きしめたい』が発売され,『エド・サリバン・ショー』でのテレビ出演も相まって,のちにビートルマニアと呼ばれる現象が起こった。
1965年にはエリザベス2世から大英帝国五等勲功章 MBEを叙勲され,その功績が認められた。
チャックベリー,エルビス・プレスリー,ビル・ヘイリーといったアメリカのミュージシャンに影響を受けた,ロックンロールが生まれた頃の新鮮さと興奮を思い出させるメロディと,飾り気のない魅力的な歌詞が組み合わさって,ビートルズのレコードはヒットチャートのトップを走り続けた。また,彼らのマッシュルームカットと呼ばれた長髪と独特の服装はその音楽とともに世界中に広まった。コンサートチケットは常に即日完売となり,従来のコンサートホールの枠に収まらなくなった人気は,ついに前代未聞スタジアムでのコンサートを実現させた。1966年訪日。日本武道館をコンサートに使用したのは彼らが最初である。なお,公の場でのコンサートはこの年が最後となった。
彼らは,シングルもアルバムも,出すレコードはすべて確実な売り上げが見込めるという経済的基盤をもとに,実験的な楽曲の形態やアレンジを自由に試すことができた。その結果,『イエスタデイ』Yesterday(1965)のようなバラードから『ペイパーバック・ライター』Paperback Writer(1966)のような複雑なリズムをもったもの,また『イエロー・サブマリン』Yellow Submarine(1966)のような子供向けの歌から『エリナー・リグビー』Eleanor Rigby(1966)のような社会的メッセージをこめた歌まで,彼らの曲はバラエティーに富んでいる。
1967年に発表された『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』Sergent Pepper's Lonely Hearts Club Bandは,雑多な曲の寄せ集めではないトータルコンセプトアルバムと評価された。電子楽器・機器を多用し,ステージでは再現できない明らかなスタジオワークという点でも斬新なものだった。こうした実験的試みは,若者のみならず,ビートルズに批判的な評論家たちも絶賛した。彼らが開拓した新しい表現方法には他のミュージシャンたちもすぐに追随し,若者以外の,より多くのファンを獲得したのである。その後ビートルズは活動範囲を広げ,メンバーのソロ活動も始まった。1970年マッカートニーの脱退声明により解散。最後に制作したアルバム『アビイ・ロード』Abbey Road(1969)は『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』と並ぶ傑作と評価されている。
1980年レノンはニューヨークの自宅前で狂信的ファンの一人に射殺された。1995年彼の残した録音テープをもとに他の 3人が 25年ぶりのビートルズの「新曲」を発表。話題を呼んだ。
代表曲は『ヘルプ!』Help!(1965),『ヘイ・ジュード』Hey Jude(1968),『レット・イット・ビー』Let It Be(1970)など多数。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビートルズ」の意味・わかりやすい解説

ビートルズ
びーとるず
The Beatles

イギリスのロック・グループ。ジョン・レノンJohn Lennon(1940―80、ギター)、ポール・マッカートニーPaul McCartney(1942― 、ベース)、ジョージ・ハリソンGeorge Harrison(1943―2001、ギター)、リンゴ・スターRingo Starr(1940― 、ドラムス)の4人。いずれもリバプール生まれ。ジョンが1953年末に結成したクォリーメンに56年ポールが、58年ジョージが参加、その後シルバー・ビートルズを経て60年にビートルズと改名、62年リンゴがピート・ベストの後任として参加。同年『ラブ・ミー・ドゥ』がヒット。64年初めに『抱きしめたい』がアメリカでも大ヒットして世界的なビートルズ旋風となる。現代人の思考と感情をジョンとポールを中心に優れた自作の詩と曲で表現し、ポピュラー音楽全般に強い影響を及ぼして新しい流れをつくり、史上もっとも偉大なグループと高く評価されている。また、彼ら4人の生き方は同世代の若者たちの強い共感をよび、その影響は音楽を超えて若者文化全般に及んだことも特記される。65年、外貨獲得の功績でエリザベス女王からMBE勲章を受章。66年(昭和41)6月、東京公演のため来日している。70年に解散、各自ソロ活動に入った。その後、何回も復活の噂(うわさ)が流れたが、ヨーコ・オノ(小野洋子)と結婚して話題をよんだジョンがニューヨークで射殺されたため、実現しないで終わった。

[青木 啓]

『P・ブラウン、S・ゲインズ著、小林宏明訳『ビートルズ ラヴ・ユー・メイク』全二冊(1984・早川書房)』『H・デヴィス著、小笠原豊樹・中田耕治訳『ビートルズ』増補版(1986・草思社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例