ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゴスペル・ソング」の意味・わかりやすい解説
ゴスペル・ソング
gospel song
(2) 19世紀後半から 20世紀初頭にかけてアメリカの黒人の間に生まれた聖歌で,黒人霊歌(→スピリチュアル)の一種。19世紀初頭に黒人の教会で使われた,イギリスの聖職者アイザック・ウォッツとチャールズ・ウェスリー作の賛美歌に,メソジスト派の黒人聖職者リチャード・アレンの詩を加えた賛美歌集に由来する。初めは有名な賛美歌に合わせて詠唱されていたが,南北戦争後,簡単なリズムと旋律に合わせてうたわれるようになった。19世紀後半になると,詩は多様で引喩に富んだ文体へと変化し,シンコペーションが強調され,より黒人的な音楽の感性に合う編曲がなされた。この発展の背景には,集会に異言とアフリカのサークルダンスを取り入れたペンテコステ派の興隆があったと考えられ,その説教を記録したレコードは 1920年代に黒人の間で大いに人気を博した。タンブリン,ピアノ,オルガン,バンジョー,ギター,その他弦楽器,金管楽器を取り入れ,聖歌隊はコールアンドレスポンスや即興,メリスマ的な歌唱法,また表現力豊かなうたい方などを特徴とする。代表的な曲として "Precious Lord, Take My Hand"や,公民権運動を象徴する歌『ウィ・シャル・オーバーカム(勝利を我等に)』We Shall Overcomeの元となった "I'll Overcome Someday"などがある。
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