日本大百科全書(ニッポニカ) 「アクロチーム」の意味・わかりやすい解説
アクロチーム
あくろちーむ
acro team
曲技(アクロバット)飛行を展示するために編成された軍または民間の飛行チーム。複雑で危険度の大きい演技飛行を、複数の飛行機が密接した編隊のまま演技したり、単機の曲技飛行を組み合わせて演技するなど、きわめて高度の操縦技術と強固なチームワークとが要求される。そのため操縦技術の向上と技術水準の誇示にうってつけとされ、各国でそれぞれ代表的なアクロチームを編成している。たとえば、アメリカ空軍のサンダーバーズ、アメリカ海軍のブルーエンゼルス、カナダ国防軍のスノーバーズ、イギリス空軍のレッドアローズ、イタリア空軍のフレッチェ・トリコローリ、日本の航空自衛隊のブルーインパルスなどがそれで、それぞれ独得の技術を誇っているが、なかでもアメリカの2チームが長い伝統と群を抜いた技術で有名である。
アクロチームは第二次世界大戦後、ジェット戦闘機の性能を最大限に引き出し、戦闘技術の向上と豪快な演技の展示によって士気の高揚を図るためにまずアメリカで結成され、しだいに世界へ広まったもので、主として西側諸国に限られている。使用機は、演技のスケールと燃料事情のため、実戦用ジェット戦闘機のほか、小形機または練習機が使われている。民間では、主として曲技専用のピストン機が用いられるが、練習時間や費用の関係で、広くは行われていない。第二次大戦前にも戦闘技術の研究のため、非公式ながら2、3の国でアクロチームらしきものが編成されたが、日本海軍では「源田サーカス」として名が残されている。
[落合一夫]