飛行機の用途別の機種の一つで,おもに乗員の練習に使われるもの。練習機の多くは操縦士の養成用の小型飛行機で,ふつう複座(2人乗り)で教官と学生が乗り,どちらの席でも操縦ができる。練習機が専門機種として生産されるようになったのは第1次世界大戦中で,その後航空機の高度化とともに,練習機も,軽飛行機クラスの初等練習機から,その上の基本練習機または中間練習機,実用機に近い高等練習機まで,数段階のものが使われるようになった。一般に初級のものほどエンジンの出力と翼面荷重が小さい。練習機は,操作の難易さと性能,装備が訓練の各段階に合っていること,固有のくせがなく上級機への移行に適していること,故障が少なく経費がかからぬこと,曲技飛行や頻繁な離着陸に耐えるじょうぶな機体であることなどが必要とされている。また操縦士以外の乗員の養成用の空飛ぶ教室として中型の機上作業練習機も使われている。
執筆者:久世 紳二
軍用練習機練習機は民間でも使用されているが,これらはほとんどが一般の機体を用いたものであり,当初から民間用練習機として作られたものは皆無に近い。これに対して軍用の場合は,最初から練習機として設計されるのがふつうである。
戦闘機パイロットの操縦訓練は,低速の初等練習機を用いて,離着陸,空中操作,航法,計器飛行などの初級訓練を終了した後,亜音速飛行が行える中等ジェット練習機により,ジェット機の基本操縦,編隊飛行,航法,戦技などを訓練し,さらに,超音速飛行が可能な高等練習機で訓練を行い,実戦配備された戦闘機による実務訓練へ移行する場合と,中等練習機を経て,直接戦闘機による訓練に移行する訓練体系があり,各国は実状に即した訓練体系を採用している。一方,戦闘機パイロット以外のヘリコプター,輸送機などのパイロットの訓練は,初等練習機による初級訓練終了後,それぞれの実用機などを用いて行われるのがふつうである。このほか,対潜,電子戦,偵察などの任務を遂行する搭乗員の機上作業を訓練するための特殊訓練機もある。パイロットの訓練に当たっては,燃料費節約,短期間での効率的な教育などのため,操作手順の慣熟を主目的とするリンクトレーナー,飛行訓練用トレーナーなどのシミュレーターが使用される。さらに,戦闘機パイロットなどは,特殊な航空環境である低圧および加速度に順応できるよう,地上施設を用いて生理訓練が行われる。
執筆者:青山 謹也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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