アクロバット(読み)あくろばっと(英語表記)acrobat

翻訳|acrobat

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アクロバット」の意味・わかりやすい解説

アクロバット
あくろばっと
acrobat

軽業(かるわざ)のこと。語源はギリシア語の「つまさきで歩く」からきたといわれる。体の柔らかさとスピードが要求され、バレエのトゥール・アン・レール(跳躍しながらの回転)、エジプトの奴隷の舞踊から生まれたといわれるブリッジ、コメディア・デラルテにみられる盆にコップをのせたままのでんぐり返しなどが代表的なものである。日本では高足駄を履いて綱渡りをする蜘蛛舞(くもまい)、空中を跳躍する蓮飛(れんとび)、肩の上に人を乗せて疾駆する人馬(ひとうま)、空中回転の「とんぼ」などの雑芸(ぞうげい)として発達した。歌舞伎(かぶき)の宙乗りは綱に滑車をつけ俳優の背中から吊(つ)るすが、アクロバット的な要素が強い。同種宙吊りは19世紀のロマンチック・バレエで妖精(ようせい)の登退場に用いられた。「天狗(てんぐ)の飛行」「蛙(かえる)の一足(いっそく)」などと動物の名がついていることが多いが、人間の体のもつ法則から逸脱して、超人的演技によって、超人と化すことを目的としているからであろう。現代では各国のサーカスのなかにこれらアクロバットの芸が集約されている。

市川 雅]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例