改訂新版 世界大百科事典 「アザム兄弟」の意味・わかりやすい解説
アザム兄弟 (アザムきょうだい)
バロック期ドイツの芸術家兄弟。天井画家だった父ハンス・ゲオルクに教育され,さらにローマのアカデミーでイタリア・バロック芸術を習得後,兄コスマス・ダミアンCosmas Damian Asam(1686-1739)は油絵とフレスコ画,弟エギト・クウィリンEgid Quirin Asam(1692-1750)は彫刻とスタッコ細工を中心に,郷里バイエルン地方で共同して建築を製作。高度の職人芸を駆使して,絵画,彫刻,建築を総合した造形は,とくに幻想的な宗教空間の創造に結晶した。ウェルテンブルクのベネディクト修道院教会(1718)の聖ゲオルギウス騎馬像,ローアのアウグスティヌス修道院参事会教会の宙づりしたマリア被昇天像(1722)など,巧みな採光の仕掛けを用いて表現力豊かな祭壇空間を演出。またミュンヘンの自邸隣に自費で聖ヨハン・ネポムーク教会(別名アザム教会,1734)を製作,曲線,曲面を用いた力動的な内部空間と正面により,後期バロックの極致をなした。
執筆者:杉本 俊多
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報