旺文社世界史事典 三訂版 「アジア内貿易」の解説
アジア内貿易
アジアないぼうえき
近代以前,すでにアジア内では中国とインドとを両軸とし,東南アジアを媒介とするアジア域内の貿易と市場が存在していた。とりわけ,15・16世紀以降,中国に対する朝貢貿易および互市貿易などの官業貿易を軸にしつつ,中国人(華僑)やインド人(印僑)によるジャンク船貿易による私貿易が,アジア域内の多角的交易網を形づくってた。そこでは,中国の茶・生糸,日本の貴金属・海産物,シャム(タイ)の米,インドの棉花,フィリピンの砂糖などが多角的に交易された。なお近年の研究では,16世紀から始まるヨーロッパ人のアジア進出に伴う貿易も,ヨーロッパ製品のアジアへの輸出といった活動ではなく,既存のアジア内交易網への参加であるとの説が展開されている。日本で南蛮貿易と呼んでいるものも,その典型例の1つである。有効な交易品がなかったヨーロッパ人は,アジア産品の購入代価として銀を支払うが,その不足分を補うためアジア内貿易網に積極的に参加し,そこでの中継貿易による利益で香辛料や茶などをヨーロッパに持ち帰った。こうしたアジア内貿易網を利用したヨーロッパ人による貿易は19世紀後半まで続いたとされる。
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