アダパ(その他表記)Adapa

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アダパ」の意味・わかりやすい解説

アダパ
Adapa

アッシリアバビロニア神話における人類始祖バビロニアの聖都エリドゥーにおいて,人民を支配するために知恵の神エアによってつくられた。神から,巨大な耳とすぐれた聡明さと極端な慎重さとを与えられ,それにより,人類生誕のエリドゥー神話の英雄になった。あるとき,釣りをしていると強い南風が吹いてきて彼は海に落ちてしまったので怒って南風の翼を折った。そこでアヌは彼を罰するために呼び出し,死の食物を与えようとするが,その策略を見抜いたエアはアダパにアヌから与えられる食物には一切手を触れないよう忠告した。ところが,アヌはアダパに会うと彼の高潔さに気をよくして考えを改め彼に生命の食物をすすめたが,エアの忠告を守ってアダパはそれを口にしなかったので,ついに彼は不死だけは手に入れられなかった。それが,人間が死ぬようになった原因だという。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アダパ」の意味・わかりやすい解説

アダパ
あだぱ
Adapa

メソポタミア神話の一つに登場する人間の名。アッカド語で書かれたこの物語は、四つの断片から再構成されている。シュメールの都市エリドゥの守護神であるエアは、神に仕える人間アダパをつくり、自分の息子とした。アダパは帆船を操って魚をとり、エアの神殿に捧(ささ)げていた。ある日アダパが魚をとっていると、鳥として表される南風が吹き荒れ、舟は転覆した。そして彼の呪(のろ)いのことばにより南風の翼が折れた。天神アヌは立腹し、アダパを天界に呼び出した。エアはアダパに、天界で差し出されたものを食べないよう教えた。天神アヌは彼に生命の食物を差し出したが、アダパはこれを食べなかったので、人間は死ぬことを運命づけられたという。

矢島文夫

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