日本大百科全書(ニッポニカ) 「アヌ」の意味・わかりやすい解説 アヌあぬAnu シュメール語で「天」を意味し、同時に天神の名でもあるアンがアッカド語に取り入れられ、セム人の神となったもので、古くはアヌムともよばれた。セム人の天神としてはエルがいたが、アヌはこれと同一視され、あるいはこれにとってかわる最高神として尊崇された。シュメールの天神アンは、中部メソポタミアのウルクのエ・アン・ナ(アン神殿)に祀(まつ)られていたが、ここを中心にアヌ神崇拝はずっと後代のギリシア系セレウコス朝まで続いた。シュメールの天神アンには対偶神として地神キがいたが、これに対してアヌの対偶神はアントゥムであり、女神イシュタルはアヌとアントゥムの娘とされる。[矢島文夫] 出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アヌ」の意味・わかりやすい解説 アヌAnu アッシリアおよびバビロニアのパンテオンの最高神。天空の世界アンシャルと地上の世界キシャルから生れた。「アヌの空」と呼ばれる最高のところに住み,配偶者である女神アンツに助けられて,宇宙を司った。「神々の王」「天の王」「国々の王」などの称号をもち,権力と正義,つまり至上権のすべての表徴をそなえている。エア,エンリルとともに三体一座を構成。アヌ崇拝は古く前2千年紀の碑文にもみられ,メソポタミアの諸都市で広く信仰されたが,シュメル地方ではウルク,アッカド地方ではデールが崇拝の中心地であった。 アヌaṇu インド哲学用語。サンスクリット語で「微小な」「原子」の意。自然界を構成する最小単位とされ,漢訳仏典では極微と訳される。インド六派哲学の一つバイシェーシカ学派によれば,地水火風の4元素におのおの性質の異なる無数の原子があるという。原子は単純微細であり,球形で不滅である。これらの原子が結合して複合体を形成し,人間の感官によって知覚されうるようになるという。 出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報